劇場公開日 2020年2月7日

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「夢の途中」転がるビー玉 sankouさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0夢の途中

2020年2月29日
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鑑賞方法:映画館

ここ数年渋谷の駅近くを歩いていると、いつも工事をしていて一体この街はいつ完成するんだろうと思う。
再開発が進んでるかと思えば、山手線から見える景色にはこれでいいのかと思えるぐらい荒れた場所があったりする。
そんな不思議な街だが、個人的には渋谷は結構好きだ。
音楽や芸術の分野で夢見て東京にやって来た若者にとっては、スタジオが充実していて芸能事務所も多いので魅力的で刺激のある街だと思う。
夢がある分、現実を突きつけられる残酷な街でもあるのだが。
さて、この映画の主人公は再開発で取り壊されるまでの期間限定でシェアハウスをしている愛、瑞穂、恵梨香の三人。
それぞれに夢を追い求めて渋谷の街に繰り出すが、いずれもまだ形にはなっていない夢の途中にいる。
好きでもない仕事を毎日続けるのもしんどいが、叶うか分からない夢を追い続けるのも同じくらいにしんどい。
好きなことをしているから良いよね、と周りは言うかもしれないが、好きなことだからこそ言い訳が出来ないのだ。
そして劇中で「憧れのままやっていても夢は叶わないよ」というような台詞があるが、夢を叶えるということは夢を現実のものにしなければいけないわけで、それもやっぱりしんどいことなのである。
夢を何とか形にしようともがいている彼女らの姿に共感出来る人もいるだろうし、所詮社会を知らない若者の一時のお遊びと冷めた目で見る人もいるだろう。
中途半端に見えるかもしれないけれど、これが夢を追い求める人の大半でリアルな姿なのだと思った。
特に真新しい内容でもドラマチックな話でもないので、この映画が好きかどうかは登場人物をどれくらい愛せるかどうかだと思った。
個人的には三人のキャラクターがそれぞれに違っていて、とても魅力的に感じたのと、気持ちが晴れない時にほんの少しのビタミン剤ぐらいの元気を貰ったようなので、作品としては良かったと思う。
恵梨香の歌を毎度歩道橋の上で熱心に聴いているサラリーマン役の山中崇が色々と気になった。

sankou