劇場公開日 2019年11月8日

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「何者でもない我々のアバター、すみっコたちがアドリブで乗り切る冒険譚が眩しい」映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0何者でもない我々のアバター、すみっコたちがアドリブで乗り切る冒険譚が眩しい

2020年2月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

しろくま、ぺんぎん、とんかつ、えびふらいのしっぽ、ねこ、とかげ他、個性溢れるすみっコたちが行きつけの喫茶店、喫茶すみっコでランチを注文したところ地下から異音が。そこには1冊の古い飛び出す絵本があり、すみっコたちは絵本の世界に吸い込まれてしまう。

正直このキャラクター達のことをビタ一文知らない私みたいな穀潰しにも解るように丁寧に世界観を説明してくれる配慮がまず嬉しい。そして桃太郎、マッチ売りの少女、アラビアンナイト他のベタなおとぎ話の世界を個性の際立ったアドリブで乗り切るすみっコ達が猛烈にキュート。そんな冒険の中での体験する葛藤、出会いと別れ、そしてすみっコたちが届けるささやかな優しい心遣いにさめざめと泣きました。これだけの濃厚なドラマをほぼ一切のセリフを排除しながらたかだか70分ほどの尺で表現し切った製作陣の力量に頭が上がりません。2時間をモノローグで埋め尽くしても何にも語れない『翔んで埼玉』他の大ヒット邦画に混じって口下手極まりない本作が昨年クリーンヒットを放ったということは実に素晴らしい、完全無欠の傑作です。

これからの邦画を牽引していくのはこういう慎ましいのに野心的な作品を世に送り出したクリエイター達であって欲しいし、そんな今まで観たことない映画を観ることを生き甲斐としている私は身銭を切って応援していきたいと思います。

ちなみに原田知世が歌う主題歌『冬のこもりうた』もメチャクチャいいです。作曲はラテンポップスの第一人者、伊藤ゴローさん。ウィキを引いてみたんですけど、私伊藤さんのことを全く知らずにMoose Hillとかリメイク版『時をかける少女』のサントラとかを買っていたことに愕然としました。

よね