劇場公開日 2019年11月1日

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「ユニークな精神病院の住民達。」閉鎖病棟 それぞれの朝 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ユニークな精神病院の住民達。

2019年11月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

観終わった直後は、いい映画だったなという感想しかない。Kの美しいエンディングテーマで十分に余韻に浸ることができる。ヒューマンドラマとしてとても良くできている。主役の笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈の三人の演技が心に響く。精神病院という外の世界とは隔絶された場所でしか生きられない人の心の形を見せてくれる。由紀の凍り付いた心が、優しさに触れてここに居場所を見つけていく所がとてもいい。小さな心遣いや、ちょっとしたふれあいも、それが心から出たものであれば、心を温かくし宝物になることを教えてくれる。
心情的にはとても好印象なのだが、客観的にみると疑問点もいくつかある作品だ。そもそも秀丸、チュウさん、由紀の三人は精神病院にいる人たちではないと思う。精神障害者だけでは物語が成立しないので、病院に舞台を借りただけに見える。覚醒剤中毒の男も、事件を起こすために無理矢理登場させられた感がある。病院の住人たちはとてもユニークで面白かったが、これは精神病院のリアリティを描いたのではなく、ヒューマンドラマの舞台がたまたま精神病院だったと言うべきだろう。

ガバチョ