劇場公開日 2020年2月14日

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「絶望する現実」屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0絶望する現実

2020年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この映画の主人公は、最近の言葉で言うと「インセル」に近い存在ということになるだろうか。とにかく、自分がモテないことが腹立たしい、だが女性に対して敬意は持っておらず、ひたすら性的欲求を満たすものとして扱う。気に入らなければ暴力に走り、最後には雑に殺してしまう。
本作は僕は『ジョーカー』とどうしても比べたくなってしまう。『ジョーカー』もまた社会にはじかれ、殺意に目覚めてゆく男だったが、彼がそうなっていくわかりやすい理由が描かれていた(最後のシーンでそれは全てウソかもしれない可能性が示唆されるが、ここでは考えないことにする)。しかし、フリッツ・ホンカがなぜあのような人物になったのかは明確な理由は示されない。理由がわかれば、それに対して解決策を示せるが、理由がわからなければどうしようもない。ホンカには救われる道はあったのだろうか。どうすれば『ジョーカー』を生み出さずに済むかはわかっても、『フリッツ・ホンカ』に対してはどうすればいいのかわからない。しかし、フリッツ・ホンカこそ実在の人物なのである。

杉本穂高