劇場公開日 2019年10月11日

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「越えざるもの」ボーダー 二つの世界 andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0越えざるもの

2019年10月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

強烈な映画だった。
まず主人公の風貌と「嗅ぐ」しぐさの異様さ。税関で匂いを嗅ぐだけで何もかもを見抜いてしまうアある種の「動物性」。特殊メイクで実現されたというこの風貌の中で、しかし確実に目で演じている女優が凄い。
彼女の正体が「人ならざるもの、むしろ自然に、動物に近いもの」であることは特性や行動で類推できる。北欧神話に詳しければ容易に想像がつくだろう。
彼女の前に明らかな「同類」の男が現れることで物語は動く。並行して描かれる児童ポルノ摘発の捜査の行方と、近所の夫婦に生まれた赤ちゃん、すべてのエピソードが驚くほど自然に一本の線に収斂されていく。
人間として生きながらも自分に「異常」を感じ閉塞を覚えていた彼女に「同類」の男がもたらす効果は劇的だ。彼女は自身を知り、解放される。男は言う。「君は完璧だ」。彼女は確かに彼にとっては完璧な同類なのだ。そしてそれが人間世界では異質なものとして虐げられる。どちらかに行かなければならない。所謂明確な「ボーダー」がそこにある。
人間と人ならざるものの境界。異質なものを排除する人間と、虐げられ人間に復讐する男。そして結局どちらの境界も越えない主人公。排除が憎しみを生み、それがどちらにも悲劇をもたらす。結局、為したことは返ってくる。
「人間は害悪だ」という言葉を人間はどう受け止めればいいのだろうか。
同じ種であるティーナとヴォーレだが、表情のつけ方がまるで違う。顔のつくりはそっくりなだけに印象深かった。
あのラストは希望なのだろうか。考えさせられる。
R18だけれど、まああの描写に引くひとはいるのだろうな。主人公たちの造形や行動や。残虐というわけではないです。

andhyphen