劇場公開日 2019年4月19日

  • 予告編を見る

「熟女コンビの謎」ハイ・ライフ カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0熟女コンビの謎

2020年1月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

難しい

ジュリエット・ビノッシュ(55歳)主演作品をハシゴ。そのひとつがクレール・ドニ監督(69歳女性)のハイ・ライフ。

SFもののようだが、内容的には妥当性や先進性はほとんどない。宇宙船を舞台に用いたに過ぎない。音響は全体を通して無音に近い。赤ん坊の泣き声だけが響く異様な前半。宇宙船内のプランターの植物や果実の映像、主人公のモンテ(ロバート・パティンソン)の地球での追想映像、赤ん坊の描写もゆっくりで、この映画の基調である。
だんだんこちらも慣れる。
記録報告すると生命維持システムが24時間延長してもらえる。
本当かよ!
設定だから仕方ない。

ビノシュ演じる女性科学者?(女医?)は宇宙船では事実上の管理者で、この宇宙実験室の使命を担っている支配者だ。彼女が地上の支配者から命ぜられた任務の内容は明らかにはされておらず、ある程度彼女にまかせられている設定。自分じゃ産まない女王蜂。男性乗務員には精液を提供させ、報酬として錠剤を与える。女性乗組員に人工受精(スポイトで精液を子宮近くに注入)を行う。この支配者に抵抗し、自分で膣洗浄する女に「無駄なことはしなさんな」と言う場面から察するに、そう考える。とにかく、細かい説明的なセリフはほとんどない。あれだけの人数の乗務員がいながら、食事する場面もない。いろいろな映画サイトのネタバレ解説では宇宙での妊娠中の宇宙線の影響を調べるとか書かれているが、生殖医療の技術が低すぎ。この点では、

ヒキタさん、ご懐妊ですよの勝ち❗

単に放射線の影響なら、地上でも可能だ。無重力状態での器官発生への影響の方が興味深いが、この映画とは関係無い。ビノシュを含め、乗組員全員が死刑囚であることや乗務員同士のセックス禁止、オナニー推奨(特別室あり)など異様な設定。女医は自分の夫と子供を殺した過去があるらしい。乗組員に生ませた子供に対する母性愛は十分あるが、極度に自己チューで、狂っている。

まぁ、観念的な映画なのである。
それを先進国の映画としてどう評価するかで、大きく意見や評価が別れるのだろう。

 ジュリエット・ビノッシュはフランスを代表する実力派女優だ。年齢も55歳だ。この映画の見せ場はビノッシュがその背中、腰で魅せるエロチシズムだと思う。特製オナニーマシンのステンレス製の冷たい無機質な突起に紫色のスキンを被せるシーンから始まる。ハガネの女優魂を感じる。もちろん、日々のお手入れ、エクササイズの賜物に違いない。

クレール・ドニ監督がジュリエット・ビノシュを使って自分の為に作ったオナニー映画だと思う。人類の未来とか、空洞化する社会とブラックホールを重ねたとか想像しても始まらない気がした。大袈裟な異空間と不条理なルールを思い付いたら、作りたくてしょうがなくなったのではないか。ジュリエット・ビノシュは美しき共謀者となることで、監督に貸しを作ったか? 元々この二人の関係はどんなものなのか? 謎だ。

カールⅢ世