劇場公開日 2019年4月19日

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「イライラの果てに待つもの」ハイ・ライフ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5イライラの果てに待つもの

2019年4月30日
iPhoneアプリから投稿

随分、観念的でチャレンジングな作品だなと感じた。
おそらく、SFというジャンルは方便で、人類や地球の行末などを象徴的に描きたかったのではないだろうか。

船内のものを宇宙に放り出すと、コンピュータが、「生命維持が24時間伸びました」と報告する場面は、何十年と続く旅で、24時間にどんな意味があるの?と苦笑しそうになる。
しかし、ふと考えると、世界中でパッチワークをするようで、根本的な議論が進まない温暖化対策なども想起され、やはり少し笑ってしまう。
そういう意味では、この船は、地球を意味しているのだろうか。

また、女性医師の試みは、僕たちが知り得ない世界中のあちこちで行われている何らかの実験などを指すのだろうか。
先般、中国の医師が、遺伝子操作ベビーを誕生させたというニュースが報じられたことは記憶に新しく、背筋が寒くなったことが思い出される。

クルーは、僕たちなのだろうか。
日々の揉め事は、あちこちで起こる争いごとを表しているのだろうか。
そして、いずれ、人類の多くは死に絶え、汚染された環境で生き続けられるのは、ごく僅かな者たちで、それさえも間もなく死に向かうのだという事を、エンディングのモンテ親子がブラックホールに向かう場面で表したかったのだろうか。

科学の進歩で生活は便利にはなったが、環境汚染は激しい。
民主主義の進まない独裁的な国や地域で、もし遺伝子操作された子供が沢山生まれたら、世界はどうなるだろか。
観念的な神は否定され、宗教的なもののみならず、僕たちの道徳観もないがしろにされるのだろうか。

思考を巡らすと、色々と考えさせられる。
しかし、映画の中のクルーの人間性や、利己的な行動もあり、映画の最中は、思考を妨げられ、観る側にイライラは募るばかりだ。

また、僕たちの中途半端な科学的知識も思考を妨げるように感じる。
科学考証をかなり抑え、僕たちに、所謂「突っ込みどころ満載」にすることによって、ワザとこの映画の論点や焦点をずらして、敢えて、僕たちをイライラさせてるようにさえ感じられる。
本当に無重力じゃなくて大丈夫?とか、宇宙空間に放り出した遺体を長いこと眺められないでしょ?とか、小型宇宙船にカバーかけなくちゃなんないの?とか(笑)。
日々メディアやネット上で交わされる、思考のフィルターを通さない直情的なやり取りに辟易するようでもある。
そんな浅薄な知識で、上っ面だけで議論してて大丈夫なの?という僕たちに対するメッセージなのだろうか。
きっと、これは、世界中に蔓延しているイライラと同じだ。

僕たちの生きる世界は、船内に凝縮された世界とさほど違いはないのかもしれない。
ただ、僕はそれ程、悲観的ではない。24時間の積み重ねは、長い年月に繋がる可能性を内包してるからだ。
どちらかといえば、悲観的楽観主義だ。

ワンコ
ワンコさんのコメント
2019年6月13日

こんにちは、
コメント、ありがとうございます。
僕は、あれこれ考え過ぎて、レビューも長文・冗長で申し訳ないのですが、そのように言っていただくと、ありがたいです。せっかくお金払ってますから、良い映画に巡り会いたいものですね

ワンコ
東神戸のウルフさんのコメント
2019年6月13日

ワンコさま🍀
貴重なレビュー、ありがとうございます🙇
貴兄のレビューを拝見するまではなんと面白くない映画だと思っていました。
ですが少し考えが変わりました。
50年以上も映画を観賞してきましたが、もっと観方のを広く持ちたいと新たに考えさせられました。ありがとうございました🙇

東神戸のウルフ