劇場公開日 2019年9月6日

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「三国志わからなくても全然イケる」SHADOW 影武者 erimakiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5三国志わからなくても全然イケる

2019年9月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

■「三国志」初心者や如何に
私は過去、三国志に関する映画、小説、その他ほとんど嗜んだことがないのでそんな人でも楽しめるようにつくられているのか否か?というのが一つの関門だった。
同じような理由で足踏みしてしまう人がいると思うので、そのような方に向けて言うとこの作品は全然イケます。
予備知識なしで観たとしてもわかりやすいストーリーに斬新なアクションシーン、デザイン、演出などなど。派手なVFXを駆使したハリウッドが跋扈する映画シーンにおいて、すべてが新鮮に見えることでしょう。

■アクション
多くの記事でも目にするように、「刃の傘」という他に類をみない新武器。ややリアリティを失ってしまっている要因にもなっていると言えなくもないが、それでも刀や槍ではなく「傘」っていう笑。その地味さを斬新さとアクロバティックな舞で補い、都督を唯一無二の戦士たらしめている。
こちらのサイトの特集でも動画があったけど、傘で市街地をローリングしていく様は自身も切り刻まれてミンチになってしまうんではないかとヒヤヒヤしたものだ。一体どんな仕組みになっているのか?と突っ込みたくはなるが面白いアイデアだと思う。

■デザイン
「水墨画のよう」と特集記事などでもよく言われている。確かに和テイスト(華テイスト?)のデザインが新鮮かつ美しい。白と黒を基調とした配色の中、霧の中に聳え立つ山々、降り止まぬ雨、古き中華の建造物。
そしてそんな絵にメインキャラ達がまたハマる。ダン・チャオの凛々しさ、スン・リーの美しさ、いずれも一国の命運を担うがゆえ、死の覚悟した儚さのようなものを感じた。
更に追い打ちをかけるように奏でられる音楽。琴と笛の音をメインに据えた映画というのも中々珍しいのではないか。
配色であれ、ストーリーであれ、演技であれ、音楽であれ、とにかく美しいのだ。

■後半まで退屈
ストーリーの起伏でいうと、始まりから全体の6割くらいまではド平坦、その先で波がやってきてからは最後の最後まで息つく間もなかったという印象。
特に後半、多くの映画は起承転結の転の部分を過ぎると後はまとめに入って穏やかに締めくくるものだがこの映画は違う。転の後に転があり、転でありながらも結に至るというような、要するに終盤の追い込みが凄い。
なのでこれから観る人は中盤まではちょっと我慢して頂ければ、後は瞬きすら惜しくなるような怒涛の展開がやってくるでしょう。
鑑賞者に考察の余地を与える部分が多いのもまたいい。

■まとめ
とは言え、やはりド平坦部分はけっこう怠いのでこの点数。
その間にも多かれ少なかれ、鑑賞者の目を引くようなアイデアや起伏があれば最高の一作に仕上がったのは間違いない。惜しい。
このところアベンジャーズとかアラジンとかゴジラとかライオンキングとかCGやVFXバリバリのハリウッド大作を立て続けに観てきたのもあり、とても新鮮だった。
ゴリゴリのCG映画ばかり見慣れてしまっているという方は、たまには独自のテイストを持つ中国映画というのもいいでしょう。

erimaki