劇場公開日 2019年8月23日

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「これ、震災小説なんだね・・」火口のふたり きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これ、震災小説なんだね・・

2020年4月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

安倍総理の
「コロナ・ウイルス 非常事態宣言」の出された日に鑑賞しました。

地震、大津波、富士山の噴火、そしてこの度の未知のウイルス「コロナ」・・

人類の存在を脅かす抗えないそんな自然の猛威の中で、それに抗って“繁殖行為”を続ける男女の、その清々しい自然体に、生命のプログラムの不思議さを思いました。
なんか感動しました。

震災の犠牲者の数を思うに、子孫を残して人類の要請に応えたいのだという素朴な願いを直子は訴えます。

被害のなかった秋田の地で、彼女は“負い目”を負っていたことをケンちゃんとの対話でようやく認識していきます。

説明調の台詞もこの際仕方ない。ケンちゃんの言葉が直子の心を開く名場面。

なぜ産みたいのか、
なぜ相手は自衛隊員なのか。

成仏出来ない死者と生者たちがパラレルに離れたまま踊る盆踊りの2つの列を切り裂くように、二人が手を取って横切るシーンに気づきましたか?あの演出は象徴的です。「あっ」と声を上げてしまいました。

そのシーンに続く直後のバスタブやベッドでの二人の対話が実に深遠なのです。
直子の本能に依る感覚的なものと、理性の導こうとする生き方とが彼女の中でついにクロスして出会っていく様が、実に素晴らしい。

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東日本大震災から9年ですね。
僕はあの時、親戚を救出に行きました。「誰を車に乗せ、誰を乗せないか」の判断は僕をPTSD に。

2011年の震災は、時を経ても、意識の下にあっても、いまだあの体験を“生傷”として心に残す生存者たちを大ぜい市井に放ちました。
そんな生存者の心の奥を書き留める作品は、まだしばらくの時間、カウンセラーとしての働きを求められていくだろうと、
そう思いました。

「たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日私はリンゴの木を植える」
ドイツの宗教改革者マルチン・ルターの言葉ですね。

人間の生そのものが「木を植える行為」なのだとケンちゃんと直子は、裸の心で教えてくれました。

きりん
kossyさんのコメント
2020年4月8日

俺も木を植えたくなりました・・・
りんごは色んな映画で何かの象徴のように使われてますよね。
コロナ非常事態宣言。
宣言そのものはいいんだけど、給付金問題がねぇ・・・

kossy