劇場公開日 2019年8月23日

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「身体的でないと分かり合えないもの」火口のふたり andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5身体的でないと分かり合えないもの

2019年8月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

食べて寝てひたすらセックスする映画、というと言葉は悪いが...言い訳しながらもただただ欲求を満たすふたりの物語。
登場人物は本当に柄本佑と瀧内公美しかいない(ただし意外な「声の出演者」がいる。冒頭一発で分かるその演出の遊び)。
ふたりの関係性はもはや、「元恋人」では表現しきれない分かち難いもので、それこそが身体的関係に深く結びついている。身体的関係で繋がっているふたりではなく、おそらく身体的関係「でしか」最終的に繋がれないふたり。
そして究極表現の筈のセックスが美しくないのもこの映画の良さだ。情事に耽るふたりのどことない滑稽さ(実際かなり笑えるシーンもいくつかある)。男女の欲求と、罪悪感と、情念。皆つくりものみたいに描かれていないのが良い。
ふたりに共感できるのかといえばしにくいものがあるが、震災に関するふたりの会話(実はそれがラストに繋がるのだが)がひどく乾いていてよい。人間そんなものだよな、と思うしそれを罪だとも思わない。ただ生きるだけだ。
しかし、原作未読なのだが、あのラストはびっくりした。未来があるのかないのかさっぱり分からないラストだ。普通の作品なら間違いなくラスト手前で切るよな、というくらい微妙といえば微妙なのだが、なぜか、あのふたりなら合うな、と思ってしまった。色々先は大丈夫か?と思うが、それすら考えず日々生きろということであろう。
柄本佑も瀧内公美も生々しかった。台詞が説明的なのはまあそうだが、二人芝居なのでさほど気にならないというか、あのふたりは会話することで生きる気がした。見つめ合って、言葉もなく抱き合うのでは意味がないのだ。

andhyphen