劇場公開日 2019年1月25日

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「トラは何も恐れない」ザ・マミー KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5トラは何も恐れない

2019年2月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ダークファンタジーやホラーの要素が満載の、子供目線のノワールのような物語。
ギャングが牛耳る半スラムのような街を舞台に、孤児の仲間や家族への想いを軸にした厳しい前進と復讐が描かれていた。

急に消えた母親と起こり始める奇妙な出来事に家を飛び出すエストレヤ。
導入はやや唐突にも思えて一瞬戸惑ったけど、どんどん嵌まり込み惹かれていった。
家族を奪われた子供達が、成り行きとはいえ恐ろしい大人に向かっていくさまがとてもスリリング。

ストリートチルドレングループのリーダー、シャイネがとにかくかっこよくて惚れ惚れする。
クソガキが自分より背の高い女の子に向かってクソガキ呼ばわりしてるところが好き。
10歳もそこそこの年齢だろうに、大人顔負けの達観した言葉を吐く彼。そうならざるを得ない状況に苦しくなる。
それでも廃墟の水たまりに集まる魚にはしゃいだりボールで遊ぶ子供達の表情がたまらなく愛しくて少し泣いてしまった。

エストレヤとシャイネの少しずつ少しずつ距離を詰めていく過程が可愛い。モロちゃんは何しても可愛い。
青年ギャングに向けた強い言葉の選び方に気持ちが込められている。
願い事の叶い方がしんどい。

死者に導かれる形で全てが繋がった時の絶望と希望に胸がズキズキする。
ボロボロになってゴミのように溜め込まれた彼女達の死体、涙を流す白目の姿が恐ろしくも切ない。
予想はしていたけど、改めてあの言葉の目的が見えた時は少し安心する。
最後なんてもうどうしようもなくだいぶ泣いてしまった。

鳥のブレスレット、エストレヤの母親はどのようにして手に入れたんだろう。何かキツい体験を経て受け継いだんだろうか。
未来にいつの日か、あのブレスレットがもっともっと良い形で誰かの手に渡ればいいなと思う。

付いてくる血液のラインや落書きのアニメーション、死者に不思議な生き物の演出がファンタジックで面白い。トラさん人形可愛い。
エストレヤを呼び込む声に悪意が無いことはなんとなく伝わるけど、その姿の出現の仕方はなかなか怖かった。
ホラー的な恐怖はそこまで無いけど、しっかりダークな描写を怠らない姿勢が好き。
残酷で厳しい話だけど、どこかほっこりする暖かさを感じる良作。

「シャイネ」という名前の通り、光に囲まれる彼の姿とエストレヤの戦士の表情が忘れられない。
Adiós.

KinA