劇場公開日 2019年10月11日

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「もしも世の中がミスチルを知らない世界線だったら」イエスタデイ canzouさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0もしも世の中がミスチルを知らない世界線だったら

2019年11月18日
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めちゃくちゃに面白かった。元々僕はダニーボイル映画が好きで、音楽が好きかつビートルズもそれなりに好きとくれば、はまらないわけもなかった。ただ、「目を覚ますとそこはビートルズを知らない世界!?ヒャッホゥー!」という映画なだけでは終わらないあたりが、ダニーボイルのダニーボイル足りうる所以なのかもしれない。

もし、ある日目が覚めて、世の中がサザンやミスチルを知らない世界線になっていたら?いやいや、僕には「涙のキッス」や「終わりなき旅」を歌って天下とってやろうなんて思えるはずもない。怖すぎる。メルカリがなくてフリマアプリを開発することも、ソフトバンクがなくて犬に喋らせて携帯売ることも、ZOZOがなくて月に行こうとすることも、きっとしない。毒杯をすする勇気は僕にはないのだ。その点、ジャックは音楽に対してはとてもとても勇敢で真摯な男かもしれない。回りが見えなくなるほど(※いや、見えてはいたのだが...)、ある日手に入れたひとつなぎの財宝ワンピース上等の世界屈指・史上最強・人類の至宝に当て込まれた。そりゃ普通の人にとっちゃ身に余りまくるものであることは、自分が、文字通り世界中の誰よりも、一番分かっていた。けれど、自分は音楽が好きで、ビートルズが好きだから。だって「Yesterday」も「Hey Jude」も「a hard day’s night」もみんなしらねぇんだぜ?やっべーだろ。あのエドシーランに認められて、アビーロードのこんな横断歩道で写真は撮らないし、軽井沢にも旅行にいかない。ワオ。マジで「HELP!!」だよ。でもこの音楽は、スタジアム一杯の人を幸せに出来ても、あの夏の歌には出来た、たった一人の隣人を笑顔にすることは出来ないらしい...え...?...。さて、お後が宜しいようで。

つまるところ、人間、目の前のことに、いつなんどきいかなるときも全力で真摯で実直であれということなのだよな。そう、いつだって「Let it be」だ。大事なのは音楽ではない。ビートルズはきっかけで、それはある日告げられる転勤かもしれないし、交通事故かもしれないし、拾った財布かもしれないし、まさかの宝くじかもしれない。今の環境がガッチャガチャに吹っ飛ぶなんて、何も映画の世界だけの話ではないのだ。そんなとき、ちゃんと自分の隣にいる人ぐらい、ちゃんと幸せにしてやる。男としては、そのくらいの度胸とパンチ力ぐらいは常にもっておきたい。見終わってから、ビートルズとエドシーランばっかり聞いてる。すごくいい映画だった。

canzou