劇場公開日 2019年6月28日

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「真実に迫る者達の息詰まる戦い」新聞記者 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0真実に迫る者達の息詰まる戦い

2022年3月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

本作は、純度100%の社会派サスペンスである。エンタメ要素はかなぐり捨てて、正義と真実というテーマに脇目も振らずに迫っていく。前半は難解さがありストーリー展開も緩慢であるが、後半、ストーリーが本流に乗ってからは、一気に緊迫感が高まり、ラストまで息詰まるサスペンスが展開されていく。

内閣情報調査室に勤務するエリート官僚・杉原(松坂桃李)は、外務省から異動し官僚主義的な正義の在り方に疑問を感じていた。一方、東都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)は、韓国人の母を持ち、新聞記者として、強い信念で政治の闇を追いかけていた。ある日、吉岡は匿名の新設大学情報を入手する。そして、この情報に隠された真実に杉原とともに迫っていく・・・。

全編の殆どが、東都新聞社内と内閣情報調査室内のシーンであり、会話と資料で綴られる物語は、派手さはないが、その分リアルでありドキュメンタリーを観ているような雰囲気がある。最近の政治で、真偽定かでない事件が多いだけに、なおさらである。

杉原演じる松坂桃李は、現実社会で誰もが直面する己の正義と組織の正義の矛盾に苦しみ戸惑う姿を好演している。思わず頷いてしまうシーンが多い。素直に感情移入できる。

真実に迫ろうとする吉岡の行動には説得力がある。吉岡を演じるシム・ウンギョンが効いている。強くてタフという雰囲気はないが、目の表情が常に真剣で隙がない。どんな困難にあっても決して諦めずに粘り強く真実に迫っていく。

ラストシーンに本作のメッセージが示唆されている。
正論を唱えても何も変わらない。行動によって示さなければ道は開けない。戦わなければ道は開けない。時として戦いに敗れても次の戦いを挑んでいく。自由を守るというのは真実究明の戦いであり、戦い続けることでしか自由を堅持する方法はない。

本作は、面白さを問う作品ではない。本作で問題提起されたテーマを我々観客がしっかり受け止めて考える秀作である。

みかずき
琥珀糖さんのコメント
2022年7月30日

共感、ありがとうございます。
この映画は映画館で観ました。
決して楽しい作品ではありませんが、観客も真剣そのもので、
固唾を呑んで観ている印象でした。
ラストの松坂桃李の表情。
無言の圧力を感じて、妻子の身を案じて、退いて行くように、
私は感じたのですが・・・。

琥珀糖
NOBUさんのコメント
2022年5月1日

今晩は。
 ご存じの通り、今作は邦画のポリティカルドキュメンタリーをシネコンで掛け、大ヒットを記録したエポックメイキング的な作品だと思っています。
 今作後、公開された「」新聞記者i」「なぜ君は総理大臣になれないのか」「香川一区」。こういう作品が、シネコンで上映されると、日本も多少は文化的成熟度が上がったかな、と思いますね。では。

NOBU
近大さんのコメント
2022年3月20日

コメントありがとうございます。

邦画では珍しい、社会や政治に斬り込んだ、挑戦的で意欲的な力作でしたね。
日本は無難な作品ばかり作ってるので、こういった作品は本当にもっと作られるべきです。
作品をただ貶めるようなレビューは論外ですが、賛否両論はしっかり作品を見て、観客が考えた/持った声だと思ってます。

近大
marimariパパさんのコメント
2022年3月18日

みかずきさん
共感&コメントありがとうございます。やっぱりキネ旬狙いだったんですね。映画好きの友人と若かりし大学生の頃、アパートで映画について語りあった際、彼が常にキネ旬を読んでたこと懐かしく思い出しました。こんなご時世映画館でソーシャルディスタンスを保って大画面、大音響(これは映画のジャンルによりますが)で鑑賞するのがここ最近の楽しみです。今後ともよろしくお願いします。

marimariパパ
marimariパパさんのコメント
2022年3月18日

みかずきさん
たくさんの共感ありがとうございます。また各作品を深く鑑賞されてのみかずきさんのレビュー、読みごたえたっぷりですね。
私なんかはこの役者が好きだから、で観てしまっているので浅い浅い小学生の夏休みの日記的レビューになってしまい非常に参考になります。
今後とも色々な作品の感想で交流させていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

marimariパパ