劇場公開日 2019年10月11日

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「【野村周平の抑制した演技に魅せられる、気持ちがどんどん高揚していくラップムービー】」WALKING MAN NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【野村周平の抑制した演技に魅せられる、気持ちがどんどん高揚していくラップムービー】

2019年10月12日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

 予想では、もっとストレートに吃音をラップに載せて、一気に突き進む物語かと思いきや、予想以上に前半の重いシーンが長く、”野村周平、個性派俳優へ一直線か? と近作、「純平、考え直せ」(快作)を思い起こしていたら、後半、気持ち良い程に見事にやられた。

 <印象的なシーンも数々あり>
 ・アトムが交通量を図るバイトでカウンターをカチカチしながら、言葉を紡ぐシーン(このバイト、今でもあるんだとも思った・・)

 ・伊藤ゆみさんの拙い日本語を話す美しく心優しき在日韓国女性としての演技。美しく魅力的な女優さんである。

 ・アトムが心優しき先輩(柏原収史:良い)に”お前はこの町で終わる人間じゃない”という言葉を掛けられ、堤防を歩んでいくシーン。

 ・自分の境遇を嘆き、自暴自棄になっていたウランに対するアトムの兄としての献身的な優しさに絆されるシーン・・・。

 前半は、俯きがちで、吃音を気にして余り喋らないアトムが、徐々に背筋を伸ばして歩む姿を野村周平が抑制した演技で見せる。
 ボディーブローのように前半シーンが徐々に効き始め、物語に引き込まれていく。

 あるテロップが出た後の、アトムのステージ上の姿とそれを涙を流しながら見つめる母娘、そしてアトムが口にするラップの素晴らしさに瞠目し、心が大いに揺さぶられた作品である。

NOBU