華氏119のレビュー・感想・評価
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トランプ政権を産んだ土壌を糾弾
マイケル・ムーア監督による2018年製作の米穀ドキュメンタリー映画。
原題Fahrenheit 11/9、配給ギャガ。
マイケル・ムーア監督による映画を見るのは初めてだが、見せつけられた事実に対する驚きと共に、弱者に対する熱い眼差しに感銘も受けた。
日本では殆ど報道されていないミシガン州フリント市の鉛入り水道供給による健康問題(行政が住民の鉛の血中濃度値を低値に改竄)とそれに対するオバマの水を飲むふりパーフォマンスと軍隊派遣による対応、学校での銃乱射事件受けての中高生や教員・運転手の大規模デモとその全米への広がり等の紹介に驚かされた。知事公邸を水道放水で攻撃する監督の姿が何ともユニーク。
監督の支持政党である民主党の実態、クリントン夫妻やオバマの資産家優遇政策に対する民衆の支持崩壊が強く印象付けられた。トランプ誕生させたのは、これら民主党の右方展開に要因があると説く。
同級生を銃乱射で亡くした高校生達が、政治家に訴えても取りあってくれず何も動かないことから、SNSを活用して自ら集会を開いて大きなデモに持ち込んでいくのに、心を動かされた。大人たちによる誹謗中傷や退学の脅しにもめけず、死んだ友人たちのありし日の姿を話す(ひいては銃社会の変革を訴える)生徒の肉声に、心が動かされた。
彼の米国政治・民主主義に対する強い危機意識と若者の正義感と行動力への期待の大きさが、画面を通してダイレクトに伝わってきて感動させられた。同時にこういう人間が継続的に映画が撮れるという米国社会の懐の大きさも羨ましく感じた。
製作マイケル・ムーア、カール・ディール、メーガン・オハラ、製作総指揮バーゼル・ハムダン、ティア・レッシン。
脚本マイケル・ムーア、撮影ジェイミー・ロイ ルーク・ガイスビューラー。編集ダグ・エイベル パブロ・プロエンザ、字幕監修池上彰。
出演はマイケル・ムーア、ドナルド・トランプ、バーニー・サンダース。
タイトルなし
マイケル・ムーアが様々な現代のアメリカの病理を突いている。差別、貧困、民主党の保守化、銃社会、を扱い、そういう混沌とした中に生まれる独裁者として、ヒトラーに比較しながらトランプ大統領の誕生を描き、アメリカ社会そのものに問題提起している。ヒラリーの民主党代表までの不正、オバマの裏切りは知らなかった。フリントの汚水問題は酷い。
アメリカの選択や如何に・・
いよいよ大統領選挙を控え、前回、トランプの当選を言い当てたマイケル・ムーア監督の慧眼に惹かれて鑑賞しました。
今ではトランプのやり口はほぼ分かっているので驚かなかったがフリントの水道の鉛汚染問題には衝撃を受けた、典型的な公害問題が現代のアメリカで放置されていたと言う事実に耳を疑う、水源を川に替えたことで酸性の水が古い鉛の配水管を腐食させた訳で科学的に予見可能だが経費削減の結論ありきの行政により長い間、隠ぺいされていた。財政難の地方行政、安易な水道民営化への警鐘でもあろう、日本とて他人ごとではありませんね。
それにしても弱い民衆の頼みの綱のオバマですらスナイダー知事を擁護していたという事実に唖然とする。民主党の幹部ですら事なかれ主義に迎合している実態を知るとオバマ時代のバイスだったバイデン候補が当選したとしても手放しでは喜べないだろう。
それでもムーア監督は人々が政治に失望したあまり無関心に陥るのでは民主主義は滅びるしかないとの警告を発しています。
権力は腐敗するということは史実が物語っており民主主義の監視人である報道機関の在り様が重要なのだが有力紙もかってのスクープを放った勢いが感じられず、マイケル・ムーアのような一匹狼に頼らざるを得ないお寒い現実はなんとも嘆かわしい、とはいっても銃社会のアメリカで身の危険を覚悟の上で揺るがぬ舌鋒は大したものですね。
次の119製作でもトランプなのでしょうかね、何が語られるのか目が離せません・・。
コロナ前の分断されたアメリカの姿
マイケル・ムーアが見せるアメリカの姿は、不正、強欲、理不尽が蔓延る醜悪で巨大な国家。
アメリカの暗黒面や、ファシストのやり口というものを知っておくことは、この複雑な時代を生き抜く上でとても重要なことだ。
彼は、資本主義を叩く。ドナルド・トランプのやり方とトランプの支持基盤である共和党と、軟弱になっている民主党を叩く。銃社会を叩く。
彼は、労働者階級の味方であり、権力というものを持たない若者や貧困で苦しんでいる教育者たちを強く映し出す。
鉛を含んだ汚染された水道水。
中学生、高校生たちが政治的な行動に青春を捧げている場面。SNSの発達がいまや一夜にして巨大な勢力を生むことができるようになっている。
彼らは、一部の教師に銃を持たせるべきだと公言する大統領と闘っているのである。
ドナルド・トランプとその一派のやり口は、民衆を可能な限り分断し、ときには軍事力で民衆の力を押さえ込むという方法だ。民衆が健康である必要はなく、支配するためにはなるべく馬鹿を多く作ること。
しかし身内の力を削いでゆくというそのようなやり方では、国力は衰えるばかりだろう。
つまり、トランプ大統領のもとで、苦労している民がいる一方で、トランプ支持をすることで得をしている層が一定数いることが浮かび上がってくる。
しかし、カメラはそこまでは行きつかない。
投票に行こう!諦めたらダメ!
アメリカは格差社会で、利権で物事が決まり、正しいことが行われていない。
不自由なアメリカは、中国と類似している。
トランプ大統領は人としては、習近平やヒトラーなどの独裁者と同じであると分かった。
トランプを生んでしまったのは、民主党のオバマの不甲斐なさや、不正をしてヒラリーを候補にして、しまったのが原因なのだろう。
アメリカに民主主義が戻るのは時間がかかりそうだ。
マイケルムーアはただのパヨク
結論から言うとアメリカのトランプ嫌いなパヨクが作った、パヨクが観て溜飲を下げるための映画です。
まず、冒頭から始まるのは悪意のある映像の切り取りと編集によって、トランプが実の娘であるイヴァンカを性的な対象としてみているんだという印象操作。
ただ政治的な信条が違うというだけでここまで下劣な人格攻撃ができるのかと、劇場で観覧していて吐き気を覚えた。
他のレビューを見ているとこの作品に対して高評価を下している人が多いが、この明らかな印象操作について疑問を持った人はいないのだろうか。少なくとも、私はこんなことをするマイケルムーアのような人間は絶対に信用できない。
さらに続くのは、左翼が大好きなヒトラーと現代の政治家を重ねて無理やり類似点を作り批判するお決まりのパターン。ただのこじつけにしか見えなかったし、あまりに内容がお粗末なのでわざわざ金を払って劇場で観たことを後悔した。日本でもよく安倍総理はヒトラーだとか言ってる奴がいるが、まともな知識と判断力がある人ならそんな言動に騙されることはないだろう。
どうせならヒトラーよりたくさん人を殺してるスターリンとか毛沢東に重ねればいいのに、どうしてそうしないんだろうね笑
その後も、アメリカの水問題や民主党の票操作などが取り上げられていたが、正直アメリカ左翼の主観が多分に入った作りになっているので信用することはできないと思った。まあ、その辺の判断は観る人によって様々だろう。
まとめとしては、この映画を観て政治を悲観したりトランプを憎む必要はないし、トランプは差別主義者だ悪魔だと言って批判しても政治は良くならない。我々一人一人がマイケルムーアの様な人間に惑わされず、自分の頭で考え行動することが大事なのだ。
よかった
大統領選のところは、宝くじが当たる瞬間をみているような、民主党にとっては悪夢そのもので面白かった。フリント市の水問題、オバマがひどい。住民たちの落胆ぶりが気の毒だった。今は改善されたのだろうか。銃規制はあんまり面白くなくて眠くなった。トランプのことをもっと見たかった。
怒れるジャーナリスト渾身のレポート
119という数字は、2016年11月9日に、アメリカ大統領選挙結果が出てドナルド トランプが勝利宣言をした日で、この数字に因んで、フイルムのタイトルがつけられている。つい先日、2018年11月6日に大統領予備選挙が行われたことも、記憶に新しい。
「華氏 911」と混同しやすいが、こちらは2004年の作品で、2001年9月11日の世界貿易センタービル崩壊後、イラクに大量破壊兵器があるとして開戦に踏み切ったジョージ W ブッシュ政権を批判した作品。ナインイレブンは2004年作品で、ノベンバーナインが今年最新作品だ。ナインイレブンの方は、アメリカで約1憶2千万ドル、全世界で2億2千万ドルの興行収入をあげ、ドキュメンタリーフイルムとしては過去最高の興行成績を記録した。未だにこの記録が破られていない。
マイケル ムアは怒れるジャーナリスト。熱い男だ。アポイントメントを取らずに突撃インタビューで取材して真相に迫る彼のスタイルは独特。偽政者の不正に怒り、一般市民の目で政府を告発し続けている。世界中の富が総人口の1割に満たない富裕層によって保持され、持てる者と持たざる者との格差が拡大する一方の物質社会。富の最たる武器製造産業が世界各地に戦争を創り出し、武器を売りつけては市民を殺し続けている。どの国の政府も、税制で優遇され肥えるばかりの大企業の言うままのパペットと化している。ありもしない社会福祉を夢見て、働きずめで搾取され続けてきた一般労働者は、税をむし取られ、貧しいものから順に戦争に駆り出されていく。それでも人々が怒り続けることを忘れてしまうのは、ちょっとだけ月に一度だけわずかな蓄えから贅沢な食事をして、数年に一度だけちょっと旅行などしたり、ブランド品を身に付けたりして、僅かな富裕層の夢を見ることができるからだ。真に豊かな富裕層と比べて余りに惨めな自分の生を、認めたくないばかりに格差社会の残酷性に自ら目をつぶってしまうからだ。怒ることは現実を見ることだ。マイケル ムアは怒り続ける。
彼はもともと民主党支持者だったし、ラルフ ネイダーの支持者だった。しかしこのドキュイメンタリーフイルムでは、共和党も民主党もきっちり批判している。2016年の大統領選挙で、識者やマスメデイアがトランプの当選などあり得ない、と笑い飛ばしていた時、彼は中西部のアメリカの製造業に関わっていた労働者の不満を綿密に取材していて、いち早くトランプが当選することを予想していた。
今回のフイルムは トランプが当選して勝利宣言を発するところから始まる。どうしてトランプが大統領選に出馬したかというと、歌手のグウェン ステファニーのギャラが自分がもっていた番組の出演料よりもずっと高いことを知らされて激高して決めたという。歌手のくせに、女のくせに、と怒り狂った末大統領、、、というエピソードは初めて知ったが、興味深い。
またトランプが口汚く中南米出身者をテロリスト、レイピストと根拠もなく決めつけ、アフリカンアメリカンを二ガーと最悪差別語で言い、女性を金の力で何でもさせることができるんだと自慢してみせ、身体に障害のあるジャーナリストのマネをして面白がる、、、およそ人間としての品格も最低限の教養も見られない、そういった素養を彼は猿に重ねて笑わせてくれる。猿の方が余程マトモだよね。
マイケル ムアの故郷ミシガン州、フリントの取材は秀逸だ。マイケル自身がこのアメリカ中西部のラストベルトといわれるど真ん中の出身で、彼の祖父も父親もGM(ジェネラルモーターズ)の工場労働者だった。ここではトランプ並みの富豪ビジネスマン出身の知事の独裁政治がまかり通っている。州の財政を倹約するために水道が民間化され、今まで水質の良い水道を使っていた市民が、高濃度に鉛で汚染された水道水で生活を余儀なくされた。鉛は飲めば、体から排泄されず脳に蓄積されて知能障害、多動児を生み、皮膚障害や流産、死産、未熟児出産の原因となる。汚染された湖から取水された水は、老朽化した水道パイプの内部で鉛が溶け出し、それを飲料水や料理や洗濯に使う市民から鉛中毒者が出る。怒った市民の抗議行動を見て、知事はGMの工場だけに今までと同じ良質な水道を提供する。しかしアフリカンアメリカンがマジョリテイーの市民には、汚染水のままだ。遂に、フリントの住民はワシントンに抗議行動に出る。
その返礼は、恐ろしいことに、何の予告もない、装甲車を先頭に繰り出した大規模な軍事演習だった。鉛中毒で人々が移住して空き地になった場所を、軍が爆撃訓練を称して砲撃する。突然の軍による攻撃に震えあがる市民たち。
そんな最中に、オバマが街にやってきた。もろ手を挙げて熱狂、歓迎する市民たち。フリントの公会堂でスピーチをしたオバマは、途中で咳をしてみせてコップに入った水を飲ませてくれ、と言う。興奮した市民、聴衆たちは大喝采をして、鉛で汚染された水道水のグラスに口をつけるオバマの一挙一動をかたずをのんで見守っている。知事は鉛は基準以下だと言っているが、化学者たちは鉛中毒の警告をしている。そんな危険で、毎日自分達が飲まされている鉛汚染水を、オバマが一緒に飲んでくれる。
市民集会でも、フリントの知事や議員たちとの懇談会でもオバマは、水道水を所望する。すばらしいパフォーマンスだ。しかし市民はしっかり見ている。オバマはグラスの口をつけてみせただけで決して飲まなかった。飲むつもりもないのに、わざわざ所望して公の場で飲むふりをする。ペテン師オバマは醜い。オバマはとても醜い。オバマは醜い。
オバマはかつて良心的弁護士で、民主党員だったが、共和党のブッシュよりもニクソンよりもたくさんの市民をアフガニスタンやイラクなどでドローン攻撃で殺害した。罪のない女子供を殺害した数が過去の大統領のなかで断トツに多い。オサマビン ラデインを法的手続きなしで殺させたのもオバマだった。犯罪者だったかどうかも未だにわかっていない被疑者を、違法に殺害するのは最も恥ずべき卑怯者のすることだ。
オバマを批判したマイケル ムアは、ヒラリー クリントンにもその矛先を向ける。大統領選挙で同じ民主党のサンダースの方が支持者が多かったにも拘らず、彼女は地区ごとに改作した偽りの報告を選挙委員会に出して、サンダースを引きずり下ろした。評の改ざんだけでなく、サンダースの集会の妨害や中傷など共和党でもやらないような汚い手でサンダースが自ら大統領選を下りるように画策した。そのため怒った民主党支持者たちは、本選挙で投票に行かなかった。民主党を割り、投票数を減らし共和党票を当選させたのはヒラリーだ。大型兵器産業や、ゴールデンサックスのような金融企業から多額の財政資金をもらっているのも、トランプだけでなく、ヒラリーもオバマも受け取っていたのだ。腐敗しているのは共和党だけではない。
ウェストヴァージニア州の教師たちの立ち上がりもレポートされている。ここでは学校の先生が低収入者むけのフードチケットに頼らざるを得ない。教師の生活を保障せよ、という大規模なデモでワシントンまで行進する。NO MONEY IS THE STRONGEST POWER。無一文が一番強い。何も奪われるのものない教師たちの捨身の行動。
トランプは、医療健康保険制度を葬り去り、銃規制の声に耳を貸さず、メキシコとの境に高い塀を築き、移民を拒否し、アフリカンアメリカンや先住民族や南アメリカからの移民差別を助長し、LGBT差別や女性差別を平気で行い、ジェルサレムにイスラエル大使館を置き、輸入関税を高くし、中国ソビエトを威嚇する軍事演習を繰り返している。彼の行動は、21世紀のファシズムとも言える。トランプのその姿は、ナチズムによるヒットラーの顔に重なる。アメリカの民主主義は崖っぷちに立っていて、ハンドルを握る男は常軌を逸したトランプだ。トランプは民主主義を壊し、ずっとホワイトハウスに住むことを、自分のゴールにしている、とマイケル ムアは言う。
一方で希望もある。草の根運動からうまれたサンダースの子供達だ。今回の大統領予備選で、ニューヨーク州から出馬して最年少で当選して下院議員となった29歳の、プエルトリコ出身のアレクサンドリア オカシオ コルテスだ。レストランで働きながら大学時代にもらっていた奨学金の返済をしている身だが、ボランテイアでサンダースの選挙運動を手伝った契機に政治に無関心ではいられなくなって出馬した。この人がものすごい美人だ。賢い女性は美しい。
またミシガン州から出馬して女性のイスラム教徒で下院議員に当選した、ラシダ タリーブ42歳。そして、マサチューセッツ州からアフリカンアメリカンの女性、アヤンナ プレスリー44歳。3人ともサンダースの子供達と言える。
フイルムは学校での銃乱射事件にあって、自分は生き延びたが友達を失ったエマ ゴンザレスのスピーチで終わる。銃規制に動かない政府に怒る高校生たち。自発的に集まり、共和党議員たちに全米ライフル協会からの寄付金を受け取らないと約束してください、と詰め寄るテイーンたちの姿が健気だ。
トランプを当選させたラストベルトの貧しい白人男性は、トランプが再び雇用を安定させて、アメリカドリームを復活させてくれることを願ってきたが、遅かれ早かれ彼らはトランプが貧しい階層の味方ではないことに気が付くだろう。彼はミリオンネイヤーを、ビリオンネイヤーにするだけの存在だったことに気付くことだろう。
ドキュメンタリーフイルムだが、ユーモアあり、ちゃかして笑わせるし、音響効果も良く狙っている。フリントでの軍による演習などすさまじい銃弾音で音だけで鳥肌がたつ。また、事実を並べるだけでなく誰にでもわかるように順を追っていて説明されていて、理解しやすい。インタビューも一方だけでなく双方の意見をちゃんと解りやすく編集している。
この映画が公開されたのは、大統領予備選の前だったから、当選者がまだわかっていなかった段階だったが、3人の当選した女性下院議員たちが、草の根運動のクラウドファンドで資金を集め、選挙に出る姿を捕えて、生の声を伝えている。彼女たちが必ず当選すると読んだマイケル モアの判断力は素晴らしい。
最後のエマ ゴンザレスの感動的な、一生に一度ともいえるスピーチも、涙なしに聴くことができない。小気味よいテンポでトランプ政権の2年間が総括されていて、すぐれた作品に仕上がっている。
マイケル ムア、この人には暗いところを独り歩きせず、サウジアラビア大使館などには行かないで、長生きして欲しい。
俺も職場のオカシオコルテスになる!
今度の米国の中間選挙では、アレクサンドラ・オカシオコルテスやイルハン・オマール等、今までなら考えられなかった顔ぶれの候補者が、民主党の下院議員として多数当選した。オカシオコルテスの前職はレストランのウェイトレスで、米国ではタブーとされる社会主義政策による格差是正を主張している。
イルハン・オマールもケニアの難民キャンプで生まれたソマリア系移民で、米国で必死に英語を習得し、イスラム教徒女性として初めて下院議員に当選した。日本のマスコミはトランプの一挙手一投足しか伝えないが、米国社会の底流ではこの様な変化が既に起こっている。
その背景を探る映画「華氏119」を先日観てきた。映画監督はご存知マイケル・ムーア。今までも数多くの映画で米国の暗部を暴露し、それに代わる未来を提示してきた。今回の映画も、かつて「華氏911」でイラク戦争の欺瞞を追及したのと同様に、米大統領選挙でのトランプ当選のカラクリを指摘したものだ。
移民国家の米国で、なぜ外国人排斥を唱えるトランプが大統領に当選できたのか?失業地帯のラストベルト(五大湖沿岸の斜陽産業ベルト地帯)で外国人に職を奪われる白人労働者の扇動に成功した、そもそも米国の選挙制度自体が大政党や多数派有利に出来ている等、理由は色々あるが、映画が焦点を当てたのは、前大統領オバマの裏切りだ。
ブッシュ共和党政権のイラク戦争や格差拡大への批判をバネに誕生したオバマ民主党政権も、年を経る毎に次第に右傾化し、国を牛耳る大資本や軍需産業に阿る政策を取る様になった。そして、それを批判するバーニー・サンダース等の党内左派を排除する為に、予備選挙の票を改竄する事までやってのけたのだ。
このオバマの裏切りに失望した1億もの有権者が次の大統領選挙で棄権に回った為に、票数では民主党クリントン陣営の方が300万票も上回っていたにも関わらず、大きな州の大統領選挙人をより多く獲得できた共和党トランプ陣営の勝利を許してしまったのだ。
その裏切りを象徴する事件がムーア監督の故郷ミシガン州フリントでも起こっていた。トランプが米大統領に当選する数年前に、ミシガン州では既にスナイダーというミニ・トランプみたいな人物が州知事に当選し、トランプさながらの独裁者として、富裕層を優遇し、批判勢力の組合弾圧に奔走していた。
ミシガン州知事スナイダーは水道民営化を推進し、故郷フリントの水道局を民間企業に売却。民間企業は儲け本位の経営に走り、設備のメンテナンスを怠った結果、水道水が有害な鉛で汚染されてしまった。その為、多くの市民が鉛公害で苦しめられる事になったが、知事は環境データを改竄し、この事実を隠蔽。
怒った市民は州知事を追及し、教師のストライキに合流。追い詰められた州知事は、何と政敵である前大統領オバマに救援を頼んだ。市民や組合にも影響力のあるオバマに宥め役を頼んだのだ。しかし、市民の歓呼に応え登場したオバマは、水道水の水を飲む事もなく、一方的に州の安全宣言に加担するのみだった。
まるで、昔の日本の足尾銅山鉱毒事件やイタイイタイ病事件を彷彿させる様な出来事だ。最近では福島の原発事故がこれに相当する。日本では、この様な事が起こっても、僅かばかりの補償金と引き換えに、事態の幕引きが行われて来た。当事者の刑事責任は問われず、逆に水道民営化が推し進められようとしている有様だ。
今の日本も米国と同じだ。安倍・福田・麻生のデタラメ政治、派遣村の惨状に怒った有権者が、せっかく自民党を下野させ民主党への政権交代を成し遂げながら、民主党の裏切りに幻滅し、再び自民党の安倍を政権に呼び戻してしまった。お陰で安倍はやりたい放題。モリカケに公文書改ざん、高プロ導入、消費税増税。
その挙句に、今度は水道まで民営化しようと企んでいる。電気代は別でも水道代だけは家賃に含まれている物件が多いのは何故なのか?電気やガス以上に水が人間の生存に欠かせないからじゃないか。それを企業の金儲けの道具にしてしまったら一体どうなる?
南アフリカでは1千万人が水道水を飲めなくなり汚染された川の水を飲んでコレラに感染。ボリビアでは水道料金の高騰に怒った民衆デモで政権が倒れる事態に。金儲けの為なら国民の命も水メジャーに売り渡そうとする安倍の、一体どこが保守の愛国者なのか?それでも日本ではいまだ安倍は安泰。
ところがフリントの市民や米国民は諦めなかった。如何に選挙制度が大政党や支配層に有利に歪められていようと、自分達に今何が出来るか追求する中で、市民や労働者の代表を政界に送り込む事に成功した。それが今度の選挙でのウェイトレスやソマリア難民、先住民出身の下院議員、同性愛者の州知事当選だ。
トランプみたいなトンデモが大統領に当選した直後は、米国も日本と同じだと思ったが、やはりそれでも民主主義の伝統は生きていた。マスコミはトランプ批判の矛先を緩めなかった。麻生に少し脅されただけでもう何も言えなくなる日本のマスコミとは大違いだ。
日本では未だこの様な動きは国政では見られない。しかし地方レベルでは確実に広がっている。それが相次ぐ反原発知事の誕生や、国の米軍基地押し付けを今も拒否し続ける沖縄県知事選の勝利だ。京都の大山崎町長選では立憲民主党まで抱き込まれる中でも市民派が勝利した。決して諦めてはならない。
今度の米国中間選挙で下院議員に当選したオカシオコルテスも、前職は一介のウェイトレスだった。それなのに、健康保険制度すら「アカ」と忌み嫌い、オバマケアすら拒否する国民相手に、「民主的社会主義」による格差是正を主張して堂々当選を勝ち取った。
銃乱射事件に遭遇し、トランプ政権や全米ライフル協会相手に銃規制を訴えるエマ・ゴンザレスも現役の高校生だ。俺も、国会議員は無理としても、今バイトとして働いている職場の「オカシオコルテス」ぐらいにはなれるかも知れない。どんな人間も、希望を捨ててしまったら、もうそこで終わりだ。
トランプ王国
2018年映画館鑑賞
160本目‼︎
人種差別や
フリントの汚染問題は
ホント酷い話だ...
見てて心が痛かった...
オバマの
パフォーマンスにもビックリ‼︎
デモ行進中だったかな?
レポーターに
若者が
「お前達が壊した世の中を
俺達で変えてやる」(みたいな事)
言ってて
とても印象に残っています。
ラストの
殺されてしまった仲間を悼む
もう二度と...のスピーチ
涙が出ました。
2時間越えで
結構長いんだなと思っていましたが
あっという間でした。
知ってたニュースも
知らなかった事実も
改めて見れて良かったです
Compromise
マイケル・ムーアが中間選挙前になんとか完成させて上映したかったという今作、確かにその思いが爆発するほどの情報量の多い演出となっているノンフィクションのジャンルである。
情報量の過剰さと、話と話をつなぐブリッジの力が弱いせいか、正直散漫さは否めない。一つ一つの話は大変大事な内容で、その映像演出も凝ってはいるし、何よりそのメッセージ性の重大さは手に取るように分る
しかしだ、如何せん、洪水のように襲ってくるその一つ一つの問題にじっくりと思考できる間も持たせず、頭の整理が出来ぬ儘、ドンドン展開を進めて行き、結局、この世界はどうにも問題は解決できないんだと、無力感を味わわせられる羽目に陥る。それは実際問題と、自分の理解能力の欠如と、まるで無関係のものがシェークされ、渾然一体となってしまうことを意味する。
ま、結論とすれば、“世界の希少な連中等の為にその他大勢の人間は犠牲を強いらされているんだぞ それでいいのか、もう妥協は必要ないんじゃないか”というメッセージなんだろうけどね。右も左もウンザリしているのが大多数の市民なんだろうけど、行動を起こさない市民も又、同罪であり、その犠牲は益々マイノリティに重くのし掛る。その警報を鳴らすことがテーマであることは十二分に伝わった。
さて、その先である。その先を提示できないのも又、人間の限界なのである。これを観て自分で考えてね、というラストは、まぁ、ジャンルとしては定石なのだが、それならばいっそ、アンチテーゼをぶつけた方がよっぽどインパクトが強かったのではないだろうか。“もう我々は問題を解決する能力は一切失っているんだよ もう一度綺麗サッパリ全て無くす他に・・・”なんてね。。。
トランプ“ケンシロウ”がアメリカの秘孔を突いて、「お前(民主主義)はもう死んでいる」と言いながらポーズを決める未来を否応なしに世界は経験してしまうんだろうね、中間選挙で。
PS:マイケル・ムーアは中間層の分断が民主主義の危機だと作品中に描いているが、もっと言えば、中間層にいる人達の中の真面目だけど欲や知恵がない人達が、それでも学歴社会の中で何とか踏みとどまっている生活水準から転げ落ちた時、端的に言えば“ハシゴを外された”時に民主主義は瓦解するのだと思う。才能やタイミング、運や縁などは不平等だ。それを叡智で人間は様々な方向でなるべく平等に推し並べることで、幸福感と連帯感を持てる社会を実現したいと願うのだと思う。
ただ、この実現への願望は今、後退しつつある。ならばいっそ、その不平等さをもっと原始的に追求すればよい。『ウホウホ』の時代まで、猿のようにだ。猿にまで退化すれば、殆どの社会問題は無くなるのだがねw
希望を持って待つのではなく、行動を起こせ‼️
作り手の恣意が全く入り込まない100%客観的なものは無い、という前提を承知の上ですが、サンダースが降りた背景、オバマが水を飲まなかったことなどの事実を追うことで見えてくる重要な真実があるのですね。
日本に住んでいるとなかなか具体的な危機感を持ちづらいが、トランプ大統領が発する、実現するはずがないと思われる暴言妄言が実際に差別や分断を引き起こしていることなどを改めて突きつけられると、ゾッとする。終盤のくだりを見てると、歴史から学ぶ前に歴史が繰り返してしまいそうで背筋が寒くなりました。
アメリカで愛国法(字幕でそう書いてました)が成立し、たぶんその流れで(もしかしたらそのアメリカの圧力で)日本でも何となく、まあ我々一般人には影響ないだろう、という感じで『共謀罪』が成立しましたが、もし、本当にテロないしは政府がテロだと認定できる(特定機密保護法により根拠を開示しないまま、とにかくテロなんです、と決められてしまうこともあるのかもしれません)事件が起きれば、その周辺の人(これも範囲は政府が決めることになるのだと思います)の電話やSNSの内容が警察に提供されることになる。結果として、〝その周辺〟に認定された人はここで書くレビューで疑いを持たれるような内容を書き込むと逮捕されることもあり得るのでしょうか。
(以上は各種報道等からの個人的な解釈・想像なので、誤認・勘違いの部分などお気付きの方がいらっしゃいましたら、ご教示頂ければ助かります。)
ラストのネバー、ネバー、ネバー、…………。
今年一番涙が溢れて止まりませんでした。
重要なのは希望よりも行動だ、というマイケル・ムーア監督の叫びにどう答えたらいいのか。しばらく悩み続けることになりますね。
日本も他人事じゃない
まず、この映画の中で語られていない部分が大切だと。
何が語られていないのか・・・(下部参照)。
そして、
アンチトランプの人が見ても溜飲が下がる映画ではないので、
期待している人は注意した方がいい。
ムーア監督は民主党支持でも共和党支持でもなく、
民主主義を装いながら、実は「民主など無視されるアメリカ」を憂う、
まさに、アメリカ支持、なのだ。
更に、ボーリングフォーコロンバインや華氏911やSICKOの様に、
構成の柱が一本では無く、
各論的に「水公害」「銃問題」と、提議が立つので、
繋がりを把握できないと鑑賞後の感想はかなり違ったものになると思う。
【以下、少々ネタバレ】
2016年の大統領選において、
米国メインストリームメディア(MSM)はこぞってヒラリーが新大統領になる事を予想していた。
しかし実は、ヒラリーはズルをして、当時、破竹の勢いで人気が急上昇していたバーニー・サンダースから民主党代表の座を勝ち取っていた。
その、ヒラリー新大統領の誕生を待ち望む民主党支持者は浮かれ、そして、急転直下の事態に泣き崩れた。
ヒラリーは日本でも知っている人も多いが、チャイナマネーの鬼でその懐に入った裏金額を考えれば、魂を売ってしまってもいい、と思えただろう。
対するサンダースはユダヤ人であるが、「民主社会主義」を訴えたところからも、いわゆる米国のディープステートと呼ばれるFRBや国際金融資本家の中心を構成する白人ユダヤとは一線を画しているのかもしれない。
そんなヒラリーのこともムーア監督は好きではないだろう、と推測するが、
結局、「アメリカfirst」のトランプも米国議員には必須の銃企業からの献金を受け、
同じ共和党から、ムーア監督の故郷でもあるミシガン州知事になったスナイダ―が起こしたのが「住民無視の水公害」である。
米国の最下層に入るであろう労働者の住む町で起こった水の鉛被害に、数値改ざんなどをして誤魔化しながら、
知事は、献金元のGM社の水源だけを改善したのだ。
そして、
今年2月、フロリダで起きた高校での銃乱射死亡事件。
しかし、純粋な高校生は立ち上がった。
「何故、私たちは安心して暮らすことが出来ないのか!?」
大人の計算や、取引、ズルなど無く、
ひたすらに「おかしな、理不尽な、今を変えよう」という若者にムーア監督は希望を託したともとれるが・・・。
さて、散々トランプを貶める米国のメインストリームメディアだが、実は、殆どの局の幹部は白人ユダヤである。
トランプのブレーンが「性犯罪者ばかり」という印象操作を映画内でしているのもいただけない。
民主党はもっとエゲツナイ筈だ。
彼等陣営が、モノやカネの国境を取り払い、
企業を株主の持ち物にしてTopには今までの日本では考えられない報酬を与えながら企業利益を吸い上げ、
移民をどんどん流入させ、EUを構築し、
世界を統一してしまおうとしている事は、彼等自身の著書や客観的事実や状況証拠を積み上げれば、必然と分かってくる。
そして「ロシア疑惑」という米国版モリカケのような冤罪を延々と流し、世界の支配主義の頂に就こうとしていることは賢者の多くが指摘している。
これは極一部のエスタブリッシュメント以外は「被搾取人」になる事を意味する。
しかし、如何せん、
メディアの殆ど(MSM)を牛耳るのが彼等陣営なので、
なかなか真実が国民には伝えられない仕組みになっている。
日本も全く同じ構造で進んでいる。
安全保障を米国に頼っているので仕方ないところはあるにせよ、
水も民営化の動きが出ているし、移民入管法も提出される。
モリカケでは本筋では何も出てこないだけでなく、
公用車でデートクラブに足繁く通っていた官僚は満額退職金を貰って、現在でも講演で稼いでいるし、公費で破廉恥問題は報じられない。
日本も民主主義を装いながら、民衆の声が届かなくなってはいないだろうか。
その意味では、高校生でも、あれだけ一つにまとまって行動をおこせるアメリカが羨ましい。
最期に
字幕監修が、池上彰氏なのも笑えた。
池上さんといえば、最近、子供の役者を、あたかも一般の子供に仕立てた「ヤラセ番組」を率い、
情報のネタ元は、それぞれの分野のジャーナリスト達だった、と
情報を盗まれそうになった(又は盗まれた?)ジャーナリスト達から暴露された人だ。
こんなメディアに日本も騙されているね・・・
☆☆☆★★★ きっかけは単なる思いつきからだった。 目立ちたがり屋...
☆☆☆★★★
きっかけは単なる思いつきからだった。
目立ちたがり屋さんが、面白いか否かで決めた事が現実となった。
別題『マイケル・ムーアの、これまで僕が追求して来た事の集大成?』
観る前は。マイケル・ムーアがどの様にして直接トランプと対峙し、斬り込んで行くのか?と思っていたら…。
なかなか本陣へとは斬り込まないマイケル・ムーア。
何故、劣勢だった稀代のなんちゃって候補者が。雪崩の様に大本命のヒラリーを倒したのか?
ムーアは或る州の選挙結果に注目し、分析する。
必ずしも、ここで起こった出来事が起因した訳でも無いとは思うのだが。映画はこの後、全くトランプの影を消し。ムーアがこれまでに追求して来た『シッコ』や『ボーリング…』『華氏911』等の総括の様相となって行く。
そして「これってトランプを追い掛ける映画だったよなあ〜!」…と、思った刹那。突然の様にヒトラーとトランプを大胆にも対比させる。
「愛国者を名乗る独裁者が表れると、人種差別主義が増える」(少し唐突に感じていたので正確ではない)
お、お、おう!(´⊙ω⊙`)
かの国にも差別主義の者が増えて来たしねΣ(-᷅_-᷄๑)
突然に街が軍事演習場に変わるなんて(日本では)考えられない!
銃刀法に関して厳しい規制の有る日本からすると。米国で増え続ける銃乱射事件はあり得ない事だ!
ましてや核兵器なんて!
だが本当に日本では起こり得ない事なのだろうか?
…いや、寧ろ状況は切迫しているんじゃないのか?
いつ何処で大量殺戮の大事件が!いつ空の彼方から核ミサイルが飛んで来るとも限らない。
何しろトランプは今や、北のロケットマンと仲良しなのだから…。
今や世界的な右翼化は止まらない。
民主主義とは、誰もが平等であるべきとゆう考え方に基づいている。
だが、【言論の自由】を曲解し、差別主義の輩が雨後の筍の様に増えて来た。
残念ながらこの流れが止まらない。
だからこそムーアは、一縷の望みを草の根運動に見いだす。
草の根で巻き起こす運動こそが、未来に繋がる唯一の夢…だと。
政治家のパフォーマンスの反応は日米で違う。
菅直人がカイワレをムシャムシャと食べるも、国民の反応は鈍かった。
日本人は慎ましい精神こそ尊いと考えるからなのか?
逆に米国人は、相手を挑発する者が人気を浴びやすい。
侍の国とガンマンの国。
オバマが自身の思いと逆…だったのかどうか?は分からないが。控え目に水に口を浸けただけだった時に。多くの人が失望してしまったのかも知れない。
オバマこそが民主主義とゆう希望の光だったはずだったのに。
2018年11月2日 TOHOシネマズ流山おおたかの森/スクリーン1
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