女王陛下のお気に入りのレビュー・感想・評価
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女の権力闘争
人類にとって民主主義の歴史は浅い。
共同体の最初は王政だった。文明初期の治水権をはじめとした諸権利を持つ者が共同体の王となり、王政のもとでは当然のごとくヒエラルキーが定められ、共同体は国家となり、国家の価値観がそのまま人々の価値観となった。差別は当然で、そもそも差別という言葉さえなかったに違いない。ヒエラルキーの下層にいる人々は不満しかなかっただろう。中には生に倦み、絶望して死ぬ者もいただろうが、大抵は生への執着を捨てきれず、恐怖と不安と苦しみの毎日を死ぬまで生きたに違いない。
時代が下って人々の連絡手段や交通手段が発達すると、不満を持つ人々の連携が生まれる。連携は連帯となり、やがて革命が起きて共同体は違う権力者によって統治される。初期の革命で成立した政治体制は、まだ十分な民主主義とは言えなかった。そして現代に至っても、民主主義は完成途上である。フランス革命のスローガンであった、自由、平等、友愛が実現されるにはまだまだ困難な道のりが残っている。
革命によって民主主義体制になっても、婦人参政権の実現は遅れた。イギリスでは、映画「Suffragette」(邦題「未来を花束にして」)に登場する20世紀初めのサフラジェットたちの活躍を待たねばならなかった。他にはもっと遅い国もあり、スイスでは婦人参政権が認められたのは1991年のことである。わずか28年前のことだ。
アン女王が統治した18世紀のはじめは、政治家は当然ながら全員男で、女は男に対して失礼があれば服を脱がされ鞭打ちの罰を受ける。女性差別も甚だしい時代だ。女たちはひたすら蹂躙されながら生きていた。唯一政治的な権限がある女は、他ならぬアン女王ただひとりである。従って女王の側近の女たちは国中で数少ない権力を持つチャンスのある女たちだ。もちろん自分自身で権力を持つことはできないが、アン女王を取り込めば権力者同然に振る舞える。
本作品はそんな女同士のエゲツない権力闘争を赤裸々に表現したものだ。脅しすかし、苦言と甘言、場合によっては肉欲にさえ訴えて、アンのお気に入りになろうとする。愚劣極まりないが、こういう権力闘争によって歴史が作られてきたのは事実である。人類の歴史は即ち負の遺産なのだ。
役者陣はみんな演技が達者で、エマ・ストーンももちろんだが、女王役を演じたオリビア・コールマンの演技が秀逸だった。サラを演じたレイチェル・ワイズとともに、スクリーンに広がる圧倒的な存在感で女の情念と女の計算高さ、そして女の肝っ玉を見せる。差別され虐げられてきてもなお、人類の存続の片棒を担ぎ続けてきた女というものの強かさをこれでもかとばかりに見せつけられた気がした。
怖かった~
人間の心理につけこむ技を競い会う宮廷が恐ろしく汚く描かれていて、ゾッとするほど怖かった。宮廷の現実は嫌らしい。
しかし、見事な受け答えと汚ならしいを技持ったアビゲイルが、人生の目的がちっぽけな贅沢だったのが哀しかった。
確かに人の心の奥底をギリギリする凄い映画ながら、好みではないので、あんまり見たくなかった。
主観で語られるのは当たり前だとしても、実在の人物にまつわる決定的な事実でない醜聞を何の疑いもなく主題として描かれることは、私は嫌いでした。
全てあとの祭り
従順な味方がいつ危険な敵に変わるとも知れないんだから。毒っ気たっぷり。
鑑賞後の虚脱感はピカイチ。
アビゲイルののし上がり劇に興奮したのも束の間、だんだん出てくるやり過ぎ感とツケ払いが痛かった。
レディの立場を取り返したところで何かその先に目的があるわけではなく、絵に描いたような堕落と油断がやるせない。
最初はその野心的な姿勢に「いけいけー!蹴散らせ蹴散らせやっちまえ!」と応援していたものの、描き方が少し変わった途端に「やり過ぎでは?サラが可哀想…」と掌返す我々観客への皮肉が刺さる。
ただ見ているだけで何を偉そうに。申し訳ない。
常に寂しくて自分自身を悲観し人が妬ましくてたまらない女王陛下アン。
歯に衣着せない物言いの友達側近サラとの日々に突如現れた、甘い言葉を囁き全てを包み込み肯定し楽しませてくれるアビゲイルにどんどんハマっていく様が分かりやすい。
突拍子もないことを言い出したりするとはいえ、何を求めているかが分かればその心の内に入り込むのも案外容易な気もする。
大好きな二人が自分を取り合い牽制し合う様子が愉しいのはなんとなく分かるかも。
ただの脆い人と思いきや案外強い部分も見え隠れして、流石女王と言いたくなる。威厳って大事。
友人兼側近として常に女王を支え、参謀として実権力をモノにしていたサラ。
夫の戦績への欲なのか国のことを本気で考えているのか、その過激な金策は良いとは言えず、まんまとそこを利用されてしまう。
独占欲は強いが特に悪いこともしていない彼女の陥落は終盤見ていて少し悲しくなった。
愛に飢え権力に飢え、それぞれに喰われた女たち。
こんなはずではなかった、正しいことを言っていたのは誰だったのか、信頼は得られないと、諸々に気付いたところで全部全部あとの祭り。
共依存的関係が解消されると開放感と消失感が交互に襲ってきて辛いだろうな。
あの後のことを考えてもなかなか絶望的な生殺し状態が続きそうで背筋が震える。
この手の話になると必ず「女は怖い」などと安易に言う声が聞こえてくるけど、スポットの当て方が違うだけで皆同じだと思う。
敢えて言うならこの人たちが怖いだけ。
ハーリーの多方向から攻めてくる政治戦略を中心に置いてもまた面白そう。でもこの人はかなりまともなこと言ってるか。
普通の女は腕力では男に勝てないけど、アビゲイルはマシャム大佐に対して常に手の力で勝ち伏せていたところが好き。
わざとらしいオーケストラの宮殿音楽にどこか現代的な柄の混ざったご婦人たちの衣装、響くアクセサリーの鳴る音が素敵だった。
全体に漂うポップな不穏の空気は流石。とても好き。
舐めてもいいが甘く見ると後悔する
強烈なインパクト。
まぁ凄い作品だ。
宮廷の装飾や衣装の豪華さ、超広角レンズを多用した映像演出、脚本、全てが高次元だが、何より実力派の三女優の圧倒的な演技力が見もの。
お見事という言葉以外浮かんでこない。
笑いの要素も多く、左側2つ空けて隣のご婦人はその都度大爆笑していたが、下品過ぎて私は笑えなかった。
好き嫌いもあるし、万人向けではないが、観ると凄さがわかると思う。
これも少し時間を空けて、もう一度鑑賞したいと思う作品だ。
女性同士の駆け引き男はかなわない…❗
星🌟🌟🌟🌟🌟 凄く面白かった❗エマ・ストーン、レイチェル・ワイズのアン女王を巡る駆け引き、罠、女性のブラックな面を見たような気がします❗アン女王の二人を天秤にかけるあざとさ…三人とも凄く上手い演技されてますが意外とアン女王役のオリビア・コールマンが一番の上手いかも… この監督の作品は聖なる鹿殺しを観ているのですがそれより分かりやすくアカデミー賞ノミネートも分かる気がします❗下手な役者が演じたら凄くゲスな作品になってたと思うので女優賞は是非取って欲しいです❗女性にオススメの作品だと思います🎵
女優3人の演技が最高です。 特にエマストーンが好きですね。 英国王...
女優3人の演技が最高です。
特にエマストーンが好きですね。
英国王室を舞台にしながら、ちょいちょい下品な場面が有ります。
前作「聖なる鹿殺し」も良かったですし、この監督の撮る映画の雰囲気好きです。
後味が悪い。
衣装、美術、三人の女優の演技、ブラックパールや、素肌や、傷を隠すレース、乗馬の女王のスタイル、好きなシーンはたくさん。
なんだけど、笑うに笑えないとこ、こんなシーン観たくないってのが後半多くて、で、救いを求めてると、あっ…終わり~となる。
後味が悪いわ~と思ってると、Favoriteと白に黒でくっきり出て来て、救われる。(笑)
宮廷内の俗物的な醜さと人間臭さがいい
孤独な女王アンと職務に誠実なサラと野心満々のアビゲイル、素晴らしすぎる演技力に圧倒された。それと合わせて、衣装に惹きつけられた。エログロな描写にもリアリティがあり、また宮廷内の権力闘争は、人間の俗物的な内面をえぐるように描かれていて、そこのダイナミックさに惹きつけられた。
エマストーンの、成り上がり!
エマストーンの、成り上がり!
30年前くらいならこういうタイトルになってそう(笑)
国家大計が語られながら、それが決定されて行く様はまさに人間模様。
笑いながらも身につまされてモヤモヤ、、、
エゲツない駆け引きに目が釘付け。
心に残る作品であることは間違いない!
エマ・ストーンまさかの@@!
auマンデー
半世界と迷いましたが、アカデミー賞最多ノミネートって事でコチラをチョイス
日本ならバカ殿を影で操る重鎮と奥女中から側室まで成り上がっるまで愛憎劇のイングランド版
宮中の異様な雰囲気や衣装に、変な人々・・・
それらを誇張するようなBGMが耳に残っる女の嫉妬と執念の物語。
エマ・ストーンのギリギリショットが多いて思ってたら、終盤まさかのサービスショット(#^.^#)
それプラス、エンドロールのデザイン構成で、 元は取れたかなって作品でした。
エマ・ストーン、今年は助演獲っちゃうのか!?と思いつつも、オリビア・コールマンか、レイチェル・ワイズのどちらかはオスカーを手にしそうな予感!?
☆3.8
一筋縄ではいかない豪華絢爛宮廷絵巻
昨年の私を不穏にさせた映画ランキングベスト3に入る「聖なる鹿殺し」を撮ったヨルゴス・ランティモスの宮廷絵巻は、若干マイルド(分かりやすく)なったとはいえやはり一筋縄ではいかないブラックユーモア。
我儘、無知、それでいてどうしようもなく傷付いている女王を争う2人の女。オリヴィア・コールマン演じるアン女王の表情の変化と台詞の陰影に圧倒される。すごく駄目なのにどうしようもなく惹かれる感じを持っている。
エマ・ストーンの絵に描いたような野心家っぷりに男前過ぎるレイチェル・ワイズ、2人の争いは思いの外醜いとか滑稽とかいうより、哀れというか...。
そして最終的には勝った、とみえた者が実はどんどん追い詰められていた、という暗示。争いというのは哀しいものだなあと思ったり。
3名ともオスカーノミネートを果たしたオリヴィア・コールマン、レイチェル・ワイズ、エマ・ストーンの演技合戦は本当に観応えたっぷり。男たちの存在感のなさよ...!それが一番滑稽だったかもしれない。
うーむ…
かつて期待をたくさん抱きながら観た映画、「ピアノレッスン」を思い出した。ストーリーでは無く、観ている時の自分の気持ち…。
その時は、観ているだけで生理的に嫌悪感を感じていた。自分でも生理的に、、、と言うのは初めてだった。今回は2度目の体験と相成った。
ただ、中盤からの反撃?が救いでもあったので、エマストーンのチカラは大きいのかとも思う。
史実の認識が高まるとしたら、観ても良かったかな〜
映画としては、観なくても??
いつのまにかラストシーン
前知識ゼロで観に行った為、「これは一体どういう話……?」「あれ、失敗したかな……?」と戸惑う冒頭。
やがてイギリス王室の話だと分かり始め、エマ演じるアビゲイルが成り上がっていく様子を見ながら、いつのまにかグイグイ引き込まれている不思議。
この感情の繊細さ!
滑稽さ!
なんか汚い!
でも美しい!
イケメン貴族がボコボコにされるところは笑ってしまった(笑)
舞台劇でも観たい!!
あとは個人的に、吹き替えで観たら印象が変わりそうな作品だと思いました。ちょっとしたニュアンスなど、原語が分からないために自分が理解できていないのかも!と思う部分が多々ありちょっと悔しかったので(笑)
中学生くらいのお子さんと家族づれできている方がいたのですが、お子さん大丈夫かな…とちょっとハラハラしました(最後までしっかり観ていましたけど)
舐めたもん勝ち!
終わってみると、やたらと殴り、張り手、突き落としがあったな~と感じた。でも暴力や脅迫やイジメにも耐えて、舐め技で寵愛を勝ち取ったエマ・ストーンに軍配が上がった。
そんな印象が残りましたが、それよりもアン女王の痛風の辛さが最も記憶に残りそうです。また、産んだ17人の子どもを全て死なせてしまい、17羽のウサギに子どもの名前をつけたとか、もうその話を聞いただけで泣きそうになりました。
アカデミー賞では女優賞をはじめとしてかなり獲得するのでしょうけど、作品賞はどうなのかなぁ~といった印象。史実に忠実っぽいので勉強になりました。
女王陛下の終りのない悲しみ
レイチェル・ワイズ様とエマ・ストーンの2大美女対決が見ものか…と思っていましたが、もっさり女王を演じたオリビア・コールマンが持って行きましたね〜!
(よくよく見るとコールマンさんが主演でした、納得)
本作は、アン女王の悲しみ・孤独・切なさが胸を打ちました。
17人子どもを失って、今は誰もいないってキツすぎるでしょ!昔は子どもの死亡率が高いからそういう悲劇もあるでしょうが、しかし17人…そしてウサギに失った子どもの名前をつけている…ホント、胸が張り裂けそうになりました。いや、張り裂けた。
女王の独白は、エマ演じるサイコパス女アビゲイルに向けられたものでしたが、情緒レスのアビゲイルもさすがに切なそうな表情をしていたと思います。
身体もボロボロ、癇癪持ちの女王ですが、なんだかんだと国民の負担を思いやる気持ちがあり、やっぱり優しい人なんだなぁと痛感。
そんな複雑で厳しい役をオリビア・コールマンはビシっと演じていたように思います。レイチェル様大ファンの私でも、本作でもっとも印象に残るのはアン女王でした。
何気に、エマ・ストーンも良かったです。序盤、アビゲイルは周囲から悪意ばかり向けられており、そりゃひどい人間になってしまうよな、と思わずにいられない。徐々に才覚を発揮して、同時にクソな人間性があらわになっていくプロセスは妙にリアル。私はエマ・ストーンにどこか下品な雰囲気があると感じていたので、この役は彼女にぴったりだったと思います。
顔芸も最高で、あの極悪なツラでの史上最悪の手コキは正直笑いました。いやー、役者ですねぇ!
レイチェル様は相変わらず高貴でお美しかったです。レイチェル様演じるサラはカッコいい女傑ですが、レイチェル様は少し憂愁の雰囲気があるので、劣勢になっていく後半の方が個人的には魅力的に思えたかも。
柔らかな光が美しい上質な映像なので気品ある映画になりそうなものですが、悪意と品のなさがそこかしこに噴出するため、いい意味で感じ悪いコメディに思えました。
ストーリーはコントなんですけど、やはりアン女王の悲しみが深く、ラストなどはなかなかに趣深い味わいを残します。なかなかの佳作でした。
幸せとは?愛とは? 本質を見出せない人々の欲望は果てしなく終わりが...
幸せとは?愛とは?
本質を見出せない人々の欲望は果てしなく終わりがない。贅沢も地位も名誉も快楽も…。
そして、毎回おなじみの性の描き方には、女性上位を感じる。しつこく女性の強かさを描く、この監督の癖だろうか?
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