「ちょっとした拾い物」シドニー・ホールの失踪 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ちょっとした拾い物

2019年6月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

幸せ

 物語はシドニー・ホールの高校時代、作家になってからの生活、そして放浪している彼を追う捜査官の3つの時系列を交互にミステリアスたっぷりに描いた作品。

 最初は童貞の妄想のようなエロ作品だと感じていたし、小説家になったのも未来の妄想だろうと高をくくっていた。ところが、3つの時系列にはそれぞれ仕掛けが施されていて、意外な“死”というものに衝撃を与えられた。

 高校時代。小学校低学年の頃に向かいの家に住むメロディが転校してしまい、すっかり忘れていたのだが、シドニーのファンだという手紙を見てまた引っ越してきたという淡い初恋ストーリー。さらに同級生のブレット・ニューポートとのストーリー。彼の父親は有名な裁判官で、学業もスポーツも万能な高校生。しかし、イジメをしている彼をシドニーが諫め、条件として子供時代に丘に埋めた小箱を一緒に掘り出してほしいと頼むのだ。その小箱の中身は映画の最後に明かされるが、ずっと気になる存在の小物だ。

 作家生活時代は、メロディと結婚するが別居中で、ついつい編集者ハロルドの娘アレクサンドラと浮気してしまうシドニー。そんな折、著書「郊外の悲劇」を読んで自殺した者がいるという話を聞き、彼自身も悩んでしまう。そしてピューリッツァー賞の最終選考に選ばれ、メロディは妊娠。女の子だったらヘレン、男のだったらホーマーと名づけようなどと和解した直後に・・・

 失踪してからホームレスのごとく髭を伸ばし、ホーマーと名付けたハウンドドッグと一緒に孤独な旅を続けるシドニー。自分の著書によって死んだ者がいるという罪悪感から図書館で燃やしたりする奇行。警官も彼を追うが、もう一人謎の捜査官(カイル・チャンドラー)も彼の姿を追いかける。

 喘息が持病であるメロディとの恋、英語教師ジョーンズとの仲、ブレットとの友情といった3本柱に、シドニーの両親が彼に対して生まれてくるべきじゃなかった子だと彼を追い込む。ブレットの父親も何か裏があるというミステリアスな展開で、秘密の小箱の中身がずっと気になってしまう。伏線たっぷりな中でも、30歳になったときの5月25日には西にある一軒家に行こうと約束したエピソードもとてもいい。そしてエンディングに流れる美しい思い出とボブ・ディランの歌に思わず涙・・・

kossy