劇場公開日 2019年6月28日

「失うことで得るものもあると信じたい」凪待ち おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0失うことで得るものもあると信じたい

2019年7月4日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

ノーマーク作品でしたが、評判がよさそうだったので、映画の日を利用して鑑賞してきました。スロースタートで序盤はじっくりと登場人物の人となりを描いているのはいいのですが、やや退屈な印象を受け、この作品のどこがそんなに良いのかと疑問を感じました。しかし、物語が大きく動き出すと様相は一変し、話の先が気になってしかたなく、いつのまにか作品世界に吸い込まれているようでした。

というのも、ギャンブル依存のキング・オブ・クズの郁男から目が離せなくなったからです。自暴自棄になっていく彼の様子に胸が締め付けられるようで、物語がどこへ向かっているのか、どのような着地を見せるのかが気になりました。ひょっとしたらなんのオチもないまま終わるんじゃないかとさえ思えました。

しかし、終盤で、暴力団の軍司、勝美の漁船、美波との関係などの伏線を回収し、郁男の変容が見て取れ、涙腺崩壊。やられました。主演の香取慎吾さんは、不器用で弱い男を迫真の演技で魅せ、娘役の恒松祐里さんも郁男を慕う思いが見え隠れするいい演技でした。中でも秀逸だったのは勝美役の吉澤健さん。彼のいぶし銀の演技がこの作品を重厚で見応えのあるものにしていると感じました。

本作を鑑賞して、何をしてもうまくいかない、苦しくつらいことばかりの日々でも、それが新しいものをもたらすこともあると信じたいと思いました。郁男に訪れた新しい家族の絆が、荒れ狂っていた彼の人生に穏やかな凪の日々をもたらすことを願わずにはいられません。それは美波にとっても、勝美にとっても、石巻で暮らすすべての人々にとっても同じです。勝美の言葉「津波のせいで海がだめになったんじゃない、津波のおかげで新しい海になったんだ」が今でも胸に響いています。

おじゃる
のりちゃんさんのコメント
2019年7月4日

メモ書いておかないといろいろいい場面を感想書き忘れてしまうけど、そこ、そこです!津波、それです。これ今の日本に必要です。
そして私の一番の涙腺崩壊ポイントは事務所に迎えに行った所。言うのわかっていてもです。また見たくなって来ました。私ならたぶん二度目のが泣けます☆

のりちゃん