劇場公開日 2018年10月6日

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「ナーガの記憶」あまねき旋律(しらべ) fuhgetsuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ナーガの記憶

2018年12月8日
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鑑賞方法:映画館

名古屋初日となる、映画『あまねき旋律(しらべ)』を、シネマテークで観てきました。
久しぶりに映画を見に来れたのも、ずっと仕事が忙しくこんなんやってられるかってなったタイミングで、この映画こそ今見るべきベストな流れで気づいたら目の前にスクリーンがあった感じです。
民俗学や民族音楽的にも貴重な映像だったと思いますが、そういった視点は専門家の方々に任せておき、とにかく映画の間ずっと流れてくる「あまねき旋律」があまりにも心地よく、魂レベルで聴き入ってしまいました。
山の谷間に広がる美しい棚田に響き渡るその歌というか音楽は、遠き記憶の歌垣であり、輪踊りであり、郡上白鳥の拝殿踊りや石徹白民謡や、郡上一帯の農作業の田植唄などに通じるものがある。
長閑でありながら緊張感のある、輪唱のユニゾンやリズム。
かつて、稲作がやってきた道にもあったであろう風景が。
アジア一帯も、アフリカも、大陸がずっとつながってた頃からある、もしかしたら言葉より古いのがこうした歌だったと思う。
映画を見て行きたくなった国や土地はよくあるけど、そこで歌われている唄の中に自分も入ってみたくなったのは、後にも先にもこの映画だけ。
だけど、歌や音楽だけがこの映画のよさじゃない。
草が生い茂る大地と一体化し、土を起こし、水を引き込み、田植えして、収穫する、その一連のプロセスの中に歌があり、そっちの方にもググッと引き込まれました。
わたしも田んぼの手植えを20年近くやって、田んぼを通じた季節ごとの風景を目にしてきて刻まれた何かと響き合うような、そんな琴線に触れる映像だったのです。
土と水、大地と共に生きる力強さ。
それが歌のエネルギーにもなっている。
アイヌのウポポとかもそうだと思うけど。
だから田植唄や農作業に限らずもっともっと古い時代から、海を渡っていた時代にも船の上で歌ってた記憶がよみがえってきた。
この地域の民俗学というより、日本に世界の古いものが保存されたように、海から来た人がたどり着いたかもしれないこの陸の孤島にも、何千年何万年単位の記憶が温存されてるのかもしれない。
インドでもない中国でもないこのナガ族とは、ナーガの龍蛇族という、太古の記憶を秘めてると思うから。

fuhgetsu