劇場公開日 2019年4月19日

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「夢中になる事、それ自体の清々しさ」愛がなんだ ビート板教室5年目さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0夢中になる事、それ自体の清々しさ

2019年7月10日
iPhoneアプリから投稿

愛がなんだ。好きですらない?
この執着は一体なんだろう?

何かに一心身を捧げている人物を観るのは清々しい。

テルコは劇中マモちゃんになりたい。という常人を超越した発言をかましてくる。

愛おしさのあまり自分の存在そのものを消滅させ、身を捧げる対象と一体化したいという願望は人が手の届かぬ程の夢を追い、憧れる対象を愛おしむ姿勢に似ている気がする。

ナカハラが催した写真展の、タイトルでも夢、というキーワードが示唆されている。

テルコとナカハラは似た者同士、夢を見ているキャラクターだけども、テルコはより一層純度が高く、決して折れずに弱音を吐かない。そして、メンヘラ的な自傷行為にも走らない。

あれだけの仕打ちを受けているテルコを観ていて、嫌なら別れればいい。と感情的に切り捨てられないのはテルコがどこまでも清々しく夢中になるパワーに突き動かされているからだと思う。

マモルの影響で職場を辞めた後の公園で、同僚からあなた自身はどうなの?それでいいの?と一瞬問いかけられる。

会話のすれ違いでテルコの答えは聞けないが、彼女の返事をどう想像するかで、夢を追い続けることへの考えを問われるのだと思う。

一切の損得を超え、理想を追求し執着し続けることは、なんともだらしなく理解に苦しむ。しかしその一方でなんとも清々しく充足に満ちている。

ビート板教室5年目