劇場公開日 2019年11月29日

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「【”若者は旧いモノを拒絶し、前進しようとする。だが、時と共に、身の丈を知るとともに、先人の経験を学ぶ。深いテーマを描いた見応えある作品である。重厚な文学作品を読了した後の満足感に浸れる作品でもある。】」読まれなかった小説 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”若者は旧いモノを拒絶し、前進しようとする。だが、時と共に、身の丈を知るとともに、先人の経験を学ぶ。深いテーマを描いた見応えある作品である。重厚な文学作品を読了した後の満足感に浸れる作品でもある。】

2020年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

知的

幸せ

<Caution 下記、レビューは、可なり、ネタバレしています・・。>

◆大学を卒業したシナン・カラスは、久しぶりに育った街”チャナカレ”の帰郷する。
 そこで、久しぶりに会う人々。
 ある人は”おやじさんに貸した金貨三枚を返すように言ってくれ・・”と言い、
 高校時代、少し気になっていた女性ハティジェは、周囲を気にしながら、煙草を吸い”街を出る”と言い、シナンと別れの口づけをした際に、シナンの唇を噛む・・。
 教師である父イドリスは、競馬にお金をつぎ込み、家に稼ぎを入れていない・・。
 シナンは、教職の試験を受けるが・・、問題が解けず、作家への道を模索する・・。

■大学卒業直後、地元に戻ったシナンの戸惑い。”自分が育った街は、こんなに旧弊で、魅力のない街だったのか・・。”
 そして、父も、且つての誇らしき姿は色褪せ、村人に呆れられながらも、”水の出ない”井戸を掘り、競馬をし、常に金欠・・。

■街の本屋で偶々会った、有名作家であるスレイマンと、シナンの価値観の違いを浮き彫りにさせる会話が、妙に面白い。
 若き、理想主義的な想いを口にするシナンと
 ”君は未だ若い。言っている事は分かるが、甘ったるい・・”
 と言う言葉を返すスレイマン。

■シナンは何とか出版の金を集め、「野生の梨の木」を出版する。母は喜ぶが、作品は売れない。

■兵役から戻ったシナンは、母の元を訪れ、今は離れて暮らす父の元へ赴く。
 父は、彼が書いた、「野生の梨の木」をしっかりと読み込んでいた・・。

 <そして、シナンは”父が掘ることを諦めた”井戸の底に下り、自らの若き頃の過ちを償う”幻影に見ながら・・” 一人井戸を掘るのであった・・。>

■蛇足
 資料を読むと、今作の舞台はトルコ北西部チャナカレである。そう、劇中でも時折触れられる「トロイの木馬」や「ガリポリの戦い」で有名な地方である。
 だが、今は、トルコ国内でも、領域的には、”田舎”である。時は移ろうのである・・。

NOBU