劇場公開日 2018年8月31日

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「トップに立つ重圧」ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5トップに立つ重圧

2019年6月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

昔からテニスの試合を見るのは好きなので、
当然この二人の選手ことは知っていたが、
ランキングナンバーワンのボルグが五連覇を、
ナンバーツーのマッケンローがが初優勝を狙う、
この伝説の試合のことはよく知らなかった。
繊細なボルグと大胆なマッケンロー。
氷の男と炎の男というイメージは広く知られた二人のパブリック・イメージだが、
少年時代のボルグはすぐにキレる問題児だったし(全く知らなかった!)、マッケンローは有名弁護士の父親に
認められたいという複雑な思いを抱いていた。
(マッケンロー自身もスタンフォード大中退という秀才)

スウェーデン映画なので、どちらかといえば、
ボルグに焦点が当たるのは仕方ないが、強く印象に残るのは、トップに立ち続ける者の孤独と重圧だ。
選手は試合になれば独りだ。
スタンドからのコーチングは禁止されている。
テニスがメンタル・スポーツだという所以だ。
選手の不安や動揺が、ダイレクトに試合内容に直結する。
決勝戦ならではの緊張感をどう集中力に変えることが出来るのか?
決勝戦までは、審判への不満、ラケットへの八つ当たりなど問題児ぶりが目立ったマッケンローが一切不満も言わず、冷静に戦っていたのは、結局、両者が根本のところでは似た者同士だったことの証しだろう。
同じコートで共に戦った者同士でなければ、
共有できないもの。
それを象徴していたのは、ラストの空港のシーンだろう。

現在、ウィンブルドン選手権の真っ只中。
男子は、ジョコビッチ、フェデラー、ナダルの三人がトップに君臨し続けているが、三人とも一時は怪我に苦しみランキングを落とした時期がある。
しかし、三人とも再び、トップレベルに戻ってきた。
当たり前のように思っていたけれども、
この後映画を観ると、この三人(アンディ・マレーも復活に向け奮闘中)のメンタルはとんでもないなとあらためて驚愕する。
去年の全米、今年の全豪とグランドスラム大会を連覇し、トップに上り詰めた大坂なおみ選手が今苦しんでいるのは、プレーの内容よりは、やはりメンタルだろう。
なんとか、この苦境を乗り越え、再び素晴らしい試合を見せて欲しいと思う。

arakazu