劇場公開日 2019年6月14日

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「自然と自分を重ねてしまう」旅のおわり世界のはじまり andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自然と自分を重ねてしまう

2019年6月20日
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鑑賞方法:映画館

黒沢清に愛されすぎている前田敦子。
前田敦子は個性的な映画監督に評価され愛されるのに、なんというか、一般受けしない感じがあり(いまだAKB48のセンターの記憶があるのだろうか...)、玄人向け女優みたいになっているが。
周りにほぼ心を開いていない、レポートの笑顔は型通り、異国の地で(これが英語圏なら若干違うのだろうが、何しろウズベキスタンである)警戒心露わに走り抜ける女性。彼氏とやり取りしている間だけ寛いだ表情を見せる女性。前田敦子は不機嫌だったり閉じていたり投げやりだったりする役がとても似合う。恐らく黒沢清はそこを見越している。
何もかもを無意識に頑張りすぎて、結局なにがなんだか分からなくなってしまう女性。自然と自己を投影したくなってしまう女性。周囲のキャラクターを巻き込んで、前田敦子の「葉子」が完璧なまでに立ち上がる。これは私だ、というような。
予想どおりだったが劇的なストーリーはない。しかし、レポーターの割に、外への警戒心が強すぎる故に(しかしその割に側から見ると彼女は無警戒だが...)起きる事件で、彼女は泣く。それまで作っていたもの、壁とか責任感とか警戒心とか、それが剥がれ落ちる。そしてその後に彼女を完全に取り乱させる出来事が起こる。しかし、それは彼女のトリガーを最後に引くひとつの出来事でしかない。何というか、為すがままというか、解けるというか。
前田敦子が歌うと否応無く「Seventh Code」を思い出すのだが、これはMVじゃないので、ある種当たり前みたいに彼女はウズベキスタンで歌う。表情が最高だと思った。歌のまあ、上手い下手は置いておいて、ああ、開けたな、という感じが勝手にした。
まあ殆どあっちゃん無双ムービーな訳だけど、脇役のキャラ立ちは良かったです。染谷将太のあの遣る瀬無い感じとか。個人的は柄本時生と前田敦子が並ぶとやっぱり微笑んでしまう。いつかはブス会4名でがっつり組んだ映画を観たい。まあしょっちゅう彼ら共演してるけどね...

andhyphen