劇場公開日 2019年2月2日

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「映画は省略の美学」ともしび 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5映画は省略の美学

2019年2月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興行的に考えてみても、間違いなく日本では作れない映画だ。会話もなく、音楽もなく、何の説明もないおばちゃんの日常を淡々と追うだけ。おまけに精気もなく、眼つきは険しく、肉体はしわがれているシャーロット・ランプリングという被写体をさらし続ける。着替えのシーンをこれでもかと見せてくるが、むしろ目をそむけたくなるんだよな。あなたも老いればこうなるんですよ、若い頃にあれだけ美しかったこの人でさえも、と訴えているよう。そうだ、あの背中は、打ち上げられたクジラに見えてきたんだった。アンナの日常は、老いの境地に惑う、ゆれるともしびなのか。
ともすれば、「さざなみ」の後日談とでも解釈できそうな気もする。退屈でたまらない人は絶対にいるだろうが、我が身を重ねて嗚咽する人も必ずいるだろうな、この映画。

栗太郎