「ホラー仕立ての『ブレックファスト・クラブ』」ニュー・ミュータント よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ホラー仕立ての『ブレックファスト・クラブ』

2021年2月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

深夜に起こった謎の超常現象で壊滅した集落で発見されたただ一人の生存者、シャイアン族のダニ。彼女が目覚めるとそこは周囲から隔絶された見知らぬ施設で、そこには医師のレイエスの監視下でレイン、イリアナ、サム、ロベルトという同じ年頃の若者が収容されていた。彼らはみな思春期に特殊能力を発動したミュータントで自身の能力を制御出来ないことからここでセラピーを受けており、ダニもミュータントと認定されて収容されたものの、様々な検査を経てもなお彼女の特殊能力が何かが判然としない。一方でダニが入所してから施設の中では奇妙な現象が起こり始め・・・

自身の能力に戸惑う若者達の物語という意味では『キャリー』、『AKIRA』、『クロニクル』、『ブライトバーン』といった作品群といった作品を連想しますが、あくまでX-MENの世界観の中で展開するスピンオフであるところが特徴。自身の能力が引き起こした悲劇を一つずつ明らかにしながらダニの能力を暗示する展開はホラー映画のようなテイストですが、ベースにあるのは『ブレックファスト・クラブ』。絶望的なトラウマを抱えているがゆえに容易には心を許さない彼らが覚醒する物語には爽やかさが滲んでいて、この辺りは『きっと、星のせいじゃない。』が代表作である監督ジョシュ・ブーンのカラーが色濃く出ているかと。予告から勝手に想像していた凄惨な感じはあまりなく、こじんまりと纏まってしまった感はありますが、徹底的に意地悪で右手に装着したパペットのロッキードと会話する不思議ちゃんキャラであるイリアナ・ラスプーチンを演じるアニヤ・テイラー=ジョイが醸す個性が切り立った存在感が鮮烈過ぎてなかなかスリリングな作品に仕上がっています。

よね