劇場公開日 2018年9月22日

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「お金とテストの結果次第という社会へのメッセージ」バッド・ジーニアス 危険な天才たち しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0お金とテストの結果次第という社会へのメッセージ

2018年10月8日
iPhoneアプリから投稿

カンニングを題材としたクライム・ムービー。しかも、カンニング「するほう」ではなく、「いかにさせるか」に焦点があり、その点で「オーシャンズ・シリーズ」に似ている。

舞台は、いわゆる金持ち私立校。
主人公は成績優秀だが、父子家庭で育ち、家計は楽ではない。主人公のライバルでもある秀才男子もまた母子家庭で家業のクリーニング屋を手伝う苦学生だ。

初めは友人を助けるためだったカンニングも、やがて、その「対価」を得るようになり様相が変わっていく。
主体性は、「させるほう」にあるのか「するほう」か。
友人と主人公、主人公とライバル。カンニングを軸に変化する関係性を、合わせ鏡や面接シーン(イスに座る)など、同じモチーフの繰り返しで表現する演出が上手い。
そして、この映画では、常にお金と成績(テスト)が人の関係性を変化させている。その点で、本作が描き出しているのは実社会の反映に過ぎず、それが子供たちにも投影されるというメッセージは痛烈だ。

映画はテンポよく進み、飽きさせない。
もともとテンポがいい上に、クライマックスではさらにスピードアップしたタイムリミット・サスペンスへとなだれ込む展開も見事。
その後半でのカットバックほか、スローモーションやクローズアップなどオーソドックスな画面作りを多用。多少、芝居がかったようにも見える演出は分かりやすい。

エンタメ度が高い上、学歴社会、格差社会へのメッセージ性もあり、良作。

しろくま