劇場公開日 2018年9月22日

  • 予告編を見る

「社会性と娯楽性を兼ね備えた佳作」バッド・ジーニアス 危険な天才たち ホワイトベアさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5社会性と娯楽性を兼ね備えた佳作

2018年10月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

中国で実際にあった試験カンニング騒動に着想を得てタイで製作された作品。現実離れしたカンニング手口の大胆不敵さには呆れますが、ストーリー展開はとてもスリリングで、娯楽作品として純粋に楽しめました。ただそれ以上にこの作品では、このようなカンニングが横行する社会の背景、即ち、貧困の固定化と異常なまでの学歴主義の問題についても強く訴え掛けているように感じました。主人公のリンや彼女の勉強のライバル、バンクにとって、勉強で立派な学校を卒業して真っ当な仕事に就くことが貧困から脱出できる殆ど唯一の道ですが、その道は狭くとても険しい。その一方で、裕福に生まれたと言うだけで安穏怠惰な人生を送ることが出来る同世代の若者もいる。そのような彼らにお金で使われてしまうリンやバンクを見ると、タイに蔓延る社会の歪を感じずにはおれません。その意味でラストのリンの決断はこの作品の救いでしょうし、歪んだ社会に対する監督なりの警鐘だったのではないでしょうか?それとうだつは上がらないが終始姿勢が振れないリンの父親を見ると、タイにはまだまだ伝統的な倫理観がしっかりと生きていることも併せて垣間見たように思いました。

ホワイトベア