劇場公開日 2018年9月22日

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「STICよりも困難な最後の問い」バッド・ジーニアス 危険な天才たち カミツレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5STICよりも困難な最後の問い

2018年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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カミツレ
グレシャムの法則さんのコメント
2018年10月2日

自分の感傷的な部分に巻き込んでしまったようで申し訳ありません。個人的な経験でいうと、中学・高校・大学・社会人のどの段階でも、こういう度量の大きい人がいるんだ、とか、こんなに頭のいい人がいるんだ、なんの打算もなくあるがままに人間関係を構築できる人がいるんだ、みたいなことを思い知らされてきたような気がしてます。どうして自分はそうじゃないんだろう、と感じ入るばかりだったので、そのような人にはいつも逆立ちしても勝てないと思ってきたわけです。理屈や理由は後から考えるので、直観的な敗北感、と称しているのです。
バンクはきっと、りん、お前は凄いな、と認めたうえで、真相の暴露も思い留まり、いつかまた、向き合える日が来るように頑張るよ、と時間はかかったとしても立ち直って欲しいのです。というか、そうであって欲しいな。

グレシャムの法則
カミツレさんのコメント
2018年10月2日

琥珀さん、コメントありがとうございます。
琥珀さんはバンクに自分自身を重ね合わせながら、この作品をご覧になられたのですね。
ラストシーンでのバンクの心情を、鮮やかに的確に言語化されていて感銘を受けました。

たしかに、バンクがおかれた環境はリン以上に厳しいものがあります。
“STIC”での計画が進行するにつれて、バンクは思いがけない“変化”を見せますが、それも、琥珀さんがおっしゃる「極限まで張り詰めている環境におかれた人間の方が、ダークサイドに堕ちやすいという人間世界の非情さ」を表しているのではないかと思いました。

逆に、リンにとっての父親の存在の大きさをあらためて感じました。
これはあくまで私の想像ですが、帰国したリンと再会する場面で父親は、リンが「彼氏とこっそり旅行に出かけた」ということ以外の“何か”を隠していることに気付いていたのではないでしょうか。それをあえて問い詰めない父親のやさしさを感じ取り、リンは全ての罪を告白する決心をしたのではないかと思うのです。

琥珀さんのコメントを読んで、リンとバンクの関係性とラストシーンの意味について、新たに思い付いたことがあります。また内容がまとまりしだい、コメント欄に追記したいと考えています。

カミツレ
グレシャムの法則さんのコメント
2018年10月1日

たぶん、映画の作り手が伝えたかったことの核心(あの演出をそう受け止めてくれて良かった、というようなことです)についての分析とその効果まで相変わらず丁寧、かつキレがありますね。
私がひとつ気になったのが、リンとバンクの対比です。リンは父子家庭であることの事情、その父が厳父であり慈母でもあることが描かれていたし、リンの帰る場所として確固たるものがありました。
バンクはもっと追い込まれた環境、母を支えるのも自分しかいないという状況で極限まで張り詰めている、それはすなわち脆さと背中合わせということでもある。いたたまれないのは、そのような人間の方がアナキン・スカイウォーカーのようにダークサイドに堕ちやすいという人間世界の非情さです。
リンの覚悟を伴ったラストの決断に対しての憧れと羨ましさと自分が見ることの出来ない世界を見つけたことへの直観的な敗北感は、私の人生においても共感できる部分でした。
映画って本当に本人が思ってる以上に観るものの姿を炙りだしてしまうんだ、ということを実感しました。

グレシャムの法則