劇場公開日 2018年10月27日

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「静かだった」ガンジスに還る CBさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5静かだった

2018年12月28日
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鑑賞方法:映画館

徹頭徹尾、静かな映画だった。
死期を感じた父親が・・へ行きたいというので、仕事を休んでつきそう息子の話。
ただし、若き監督が描きたいのは、おそらく、「インド伝統の家父長制からくる父親からの無言の圧力からのゆるやかな脱脚」みたいなことだと思う。
主人公である息子は、父親の希望をかなえるために仕事を2週間も休みあれこれ文句を言われる。死期の近づいた彼の父親は、彼に「自由にさせてやらなかった私は悪い父親だ」と嘆き謝る。いっぽう彼の娘は、良かれと思って娘に世話した婚約者との結婚を納得しておらず、就職しスクーターに乗って出かけることを選ぶ。
「ダンガル きっとつよくなる」は、娘に強制的にレスリングをさせた父親が結果的に彼女たちに自由な道を切り拓いたという話だった。この映画に見るように、さらに一歩進んだインドは、娘が自由に自分の人生を決めていくようにまでなってきたということか。
この作品のいいところは、時代の流れの中で必然的にそうなっただけということをしっかり描いている点。父親たちの意向は無言の圧力になっているが、そこに悪意も何もないことがちゃんと伝わる。主人公も、その父親も当たり前と思うことをしているだけなのに、まわりの反応にとまどうばかり。
静かだけれど不思議と退屈ではない、いい映画でした。

CB