劇場公開日 2018年9月21日

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「首縊り修道院の恐怖」死霊館のシスター 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5首縊り修道院の恐怖

2018年9月25日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

大ヒットホラー『死霊館』の続編『死霊館 エンフィールド事件』で登場した尼僧姿の悪魔ヴァラク。
額縁から飛び出して観客をガクブルさせた(←は?)その悪魔の起源を描くスピンオフ作!
神に仕える尼僧を装った冒涜的な姿のヴァラクは近年稀に見る恐ろしさのホラーキャラだと思うのだが、
そのヴァラクさんが主役となると、よっぽど怖い映画を期待せざるを得ない訳である。

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で、これはもう最初に書いてしまうのだが……並のホラーよりは怖い。並のホラーよりは怖いが、
期待したほどの恐怖は得られなかったかな。『死霊館』関連5作品の中では3、4番目位の怖さだろうか。
本作を気に入っている点は多いが、今回はまず恐怖演出についての不満点から書き出してしまう。

本作の後でシリーズを観直して感じたが、『死霊館』1・2作目の恐怖シーンはひとつひとつが長い。
物音やオブジェで違和感を与えた後、『今にも何かが襲ってくる』という雰囲気を執拗なくらいに
じわじわ高めていく。観客が怖くて見つめたくない所を延々と映し続けるんである。
本作は、その『見つめたくない所を延々と映す』間が、やや短い。闇の奥からぬうっと滑り来るヴァラクとか、
直立死体の群れを抜けるシーンとか、めっさ怖いんだからもっと長々ネチネチやっても良かったのに。

簡潔に言えば『もっとドSな怖がらせ方でも良かった』ということ。
最初に書いた通り、並のホラーと比べれば怖い方なので、これは割と贅沢な不満点。
だけど……ヒヒ……足りねえ……なあ、もっとだ……もっと怖がらせてくれよおッ!
(ホラー映画の観過ぎで筆者は少し気がふれていますご了承ください)

怪異が色々と出過ぎてヴァラクさんの影が若干薄く感じたり、『アナベル』2作目のシスターの話と
イマイチ辻褄が合っていないように感じたりといった点も若干気になったかな。
あと、日本人的な感覚なのだろうが、やっぱ肉体を持った怪物などの物理的恐怖より、悪意の所在が不明瞭な
精神的恐怖の方が怖い。で、本作は他シリーズより物理的恐怖が少しだけ濃いめに感じる。ゾンビ的なアレとか。

...

だが本作には、過去の『死霊館』シリーズや他ホラー作と比べても魅力的な点がある。それは、ゴシックホラー――
深い暗黒や古びた廃墟等が放つ、重厚でミステリアスな空気を湛えたホラーとしての風格である。

舞台は1952年、ルーマニアの寒村にある修道院。村の外れの森にあるその院の周りには、建物をぐるりと
囲むように大量の十字架や墓が乱立している。3ヶ月ごとに食料を運ぶしきたりは100年以上続いているが、
村人は中で何が行われているかを知らず、それどころか修道女の姿を殆ど見たことがない。
ある日、修道院の外で尼僧の首吊り死体が見つかり、修道院の素性調査のために主人公――神父と
見習い修道女――が派遣されるが、主人公達が中へ足を踏み入れても、人の気配が殆ど無い……。

この設定からして忌まわしさ全開だし、この修道院や、修道院を囲う森の重苦しい雰囲気も物凄く良い。
夥しい数の十字架が乱雑に立てられた森や、修道院なのにどこか冒涜的な空気を感じさせる礼拝堂など、
黴臭い死のにおいがそこら中に立ち込めているような“穢(けが)れ”た雰囲気が堪らなく怖い。

いたずらにドッキリさせるのではなく、思わず顔がひきつるような忌まわしさを覚える演出の数々も好み。
いつの間にか姿勢を変えている死体、数ヶ月経っても渇かない血の跡、
顔の見えない尼僧たち、生埋めを知らせる墓の鐘の音、水面に立つ者……

...

修道院とヴァラクの関係が明かされるシーンはもっとじっくり描写してほしかったが、不気味で陰鬱な
雰囲気や少しずつ紐解かれていく修道院の呪われた歴史についてはメチャクチャ好みである。
また、生涯を神の道に捧げることに迷いを感じている見習い修道女アイリーンが、他の修道女たちの
想いを知るうちに自らがどんな道を歩むべきかを決意していく成長ドラマも熱かった。

最後にシリーズとの関連も示されるが……観直したらちゃんと登場してましたね、あの人。
後付けではあると思うけど、うまく繋ぎましたね。「お前だったんかい!」とね。

以上! 雰囲気抜群のホラーで楽しめました。観て損ナシの3.5判定で。

<2018.9.23鑑賞>
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余談1:
修道女アイリーン役タイサ・ファーミガは、ロレイン役ベラ・ファーミガの21歳離れた実妹だそうな。
どうりで顔が似てる訳です。ほんとに似てるんでちょっと混乱してしまったシーンもあったが、
物語上での血縁は無いようだった。ひょっとしたら遠縁だったりして。

余談2:
『死霊館』の大ヒットから拡張を続けている本シリーズは“死霊館ユニバース”と呼ばれており、本作で5作目。
今後も『死霊館』3作目や『The crooked man( へそ曲がり男)』が制作予定とのことで楽しみ。
しかしこれだけ続くと、そのうち『死霊館:インフィニティ・ウォー』みたいな作品が制作されそうね。
エクソシスツVS悪魔チーム! みたいな(なにそれ酷そう)。

浮遊きびなご
近大さんのコメント
2019年2月23日

きびなごさん
コメントありがとうございます♪
明けまして…と言うより、過ぎましておめでとうございます(^^)

『死霊館のシスター』、きびなごさんのレビューにも書いてある通り、並みのホラーと比べると確かに怖いんですが…、
勿論面白かったのは面白かったんですが、ちと視覚的や物理的な恐怖に傾いてしまったかな、と。
ヴァラクさんのインパクトは充分なんですけどね~。
でも死霊館ユニバースは好きなので、秋の『アナベル3』、本家3も楽しみであります♪

だけど、それ以上の楽しみはやはり、『ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ』ですね!
本当にオリジナルへのリスペクトたっぷりの三大怪獣!
あの第1作目でゴジラを葬った禁断の兵器が登場するとか、伊福部音楽も使用されるとかで、公開始まって遂に観たら、もうニヤニヤが治まらないでしょう!

今年はゴジラの他にも、寅さんやアベンジャーズやSWなど、BIG期待作がいっぱいです♪

きびなごさんのレビューもまた楽しみにしております♪

近大
Minaさんのコメント
2018年10月2日

コメントありがとうございます。
「死霊館3」が「チャイルド・プレイ」とのクロスオーバーになるとの情報です。

まぁ、企画倒れの可能性もありますが。

確かに…最近私のレビューはサメだのワニだの…多分、「MEG/メグ ザ・モンスター」が色濃く影響していると思われます。

Mina
Minaさんのコメント
2018年10月2日

「死霊館」と「チャイルド・プレイ」のクロスオーバー作品は企画されているらしいですよ。個人的に人を怖がらせる者同士が価値観の違いで争って欲しいなと思っております。
「シビル・ウォー:チャッキー」みたいな笑

Mina