劇場公開日 2020年1月3日

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「“今”の社会を生きる登場人物達が愛おしくなる作品。」ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“今”の社会を生きる登場人物達が愛おしくなる作品。

2020年1月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

良かった。

社会的地位を築いた成功者(女性)と“大人”になりきれず巧く社会を泳げない落伍者(男性)のラブコメディ。
従前のラブコメディとは立場が逆……という表面的な入替遊びではなく、男性社会で女性が成功すること、“女性だから”と受ける(意識的/無意識的な)差別や苦節が描かれると同時に、表面でしか判断されない“男もつらいよ”も描かれるバランス感覚にグッときました。総じて『表面しか評価されない社会は生き難い』がシニカルに、コミカルに描かれていました。

特筆すべきは登場人物、特にシャーロットの愛おしさ。
セス・ローゲン演じるフレッドが馬鹿愛おしいのは予測の範囲内でしたが、シャーリーズ・セロン演じるシャーロットが無茶苦茶可愛い、愛おしい。公的な場面で魅せる凛とした佇まい……からの、カッチョ悪い手の振り方!序盤、パーティーで座り込む姿で一気に持っていかれました。
フレッドと再会した後のシャーロットが随所に見せる素の部分。肉のカーテンの如き鉄壁防御がフレッドとの交流で溶けていく、大衆に求められるマネキンだったシャーロットがどんどん人間臭くなっていく。その過程…そしてピリオドの向こう側に至った際の突き抜け方にゲラゲラ笑いながら胸が熱くなりました。

またフレッドとシャーロットが惹かれ合う過程の描写が丁寧。
シャーロットと再会したフレッドのさり気ない一言のパンチ力。その後も彼等が互いを知り、共有し、共に楽しむ過程と結果が随所に表面化。「あ、コレを共遊したんだ」と気付く楽しさに溢れています。

細かい演出も楽しい。
彼等が語る今のエンタメ情報、政況、社会情勢、着ているTシャツ、そして彼等が思い出し、語り合い、共有する想い出の風景は“今”を生きる我々の言葉であり想い出であり。設定はコメディですが、登場人物の背景は現実に近い感じに親近感を覚えました。

“今”の社会を生きる登場人物達が愛おしくなる本作。

人によっては“下品”と感じる部分があるのも確かですが。フレッドのアレな場面は人間臭くて、愛おしく、面白い。愛溢れる馬鹿最高な場面でした。
ワカンダフォーエバー!

オススメです。

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Opportunity Cost