劇場公開日 2018年9月14日

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「じっさい同時受賞ってあるのかな」響 HIBIKI 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5じっさい同時受賞ってあるのかな

2020年7月11日
PCから投稿

しばしば、原作のキャラクターと映画の配役が、かけ離れていて、漫画ファンが激怒した──というエンタメニュースが、滑稽な風物詩のように語られることがありますが、私は漫画をぜんぜん読まない人なのですが、単に絵面を見ただけで「これ、ぜんぜん違くない?」と思うことが、結構あります。邦画のキャスティングってのは、相当に不誠実な代物、だということは知っています。

平手友梨奈に、特にシンパシーがないので、序盤はよくある生意気な女子高生に見えました。表情に動きが無いのがつらいです。でも、現実世界では言えない正論をずけずけ言ってしまう響に、このキャラクターの態度として、達観や粗暴や不遜が適していると感じるに至りました。
なので、失礼ながら原作未読なのですが、おそらくミスキャストを回避している珍しい実写なのではないか、と推測しています。

ただし平手友梨奈に、崇めたてるほどの才能があるかどうかは、この映画だけでは解りませんでした。個人的には、世間のエンタメニュースに見る、彼女に対する逸材の扱いは、妙にアイドルバイアスがかかった評価だと思いました。

文壇を知りませんが、響の周囲で小説を書いている登場人物たちには、なんとなくリアルなため息を感じました。「ああ、こういうひとホントにいるんだろうなあ」という気がしたのです。だから、有り得ないことが描かれているにしても、一定のリアリティがありました。案外、出版業界という所には、似たようなキャラクターが大勢いるんだろうという感じがしました。

線路の真ん中に佇んで、何度も受賞を逃して消沈している作家役の小栗旬に、
「10年やってたなら、あなたの小説を読んで面白いと思った人、すくなくともいるわけでしょ。それはわたしかもしれないし。売れないとか、駄作とか、だから死ぬとか、人が面白いと思った小説に、作者の分際で何ケチつけてんの」
と言い放つところが、映画としても白眉で、セリフもカッコ良かったです。このセリフで書き続けることを決意した人だって絶対いると思います。

登場人物が多すぎてやや片手落ちになっている感はありますが、達者な人ばかりだったので、破綻はなかったと思います。個人的には、短い登場時間ですが、高慢なキャラクターの柳楽優弥が良かった。響に反撥するものの、その後感化されて「読んだこともねえ奴が批判すんじゃねえよ。俺はあれ読んで、心が震えたよ」と言うシーン、高慢だけれど、単純で公平な人物像がやたら決まってました。

青春の話だと思います。若さが絶対の価値を持っているからです。響だって、大人になれば、もっと世知辛い考えにならざるを得ないでしょう。だから青春の物語だと思ったのです。その刹那の輝きをとらえている、と感じました。

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津次郎