劇場公開日 2018年9月14日

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「"誰か"でなく"あなた"に読んで貰ったとき、天才は自分の棺を用意する」響 HIBIKI わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0"誰か"でなく"あなた"に読んで貰ったとき、天才は自分の棺を用意する

2020年6月7日
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物語だけ見れば正統派ではないけれど、正統派なアイドル映画でした。

「君の膵臓を食べたい」では、浜辺美波の眩しいほどの純朴さを小栗旬と北川景子が落ち着いた演技で支えていました。今作は平手友梨奈の孤独さに北川景子が寄り添い、小栗旬が救われる。月川監督での2人は特にいい仕事をしています。

平手友梨奈の演技はまだまだこれから。ただ、彼女だからこそ演じられた役だと思いますし、これこそがアイドル映画の魅力です(恋愛について敏感な反応をするのが意味深ですね)。

響は自分がどう悪く言われるかではなく、喧嘩を吹っ掛けられたときや信頼している人が傷つけられたときに暴力を振るうことで周囲を魅せていくという共感が難しいキャラクターでした。自分の御し方が分からない中でラストシーンに少しその感情の答えが見えたような気がします。彼女が文章に求めているのは、テクニックではなく魂であり生命力で、それに気付いて欲しいんだろうなと思いました。

物語を創造する天才を描いた作品と言えば、『バクマン。』も思い出されるのですが、どちらの映画も親の存在にはあまり言及されないんですよね。こういう環境に対して親はどう思っているのかとか、どう親が導いたのかは個人的に描いてくれるのが好みです。ライバルのアヤカ・ウィルソン演じる凛夏の方ががっつりやっていたのも影響しているのかもしれませんが。

原作未読なので、掴みきれないところも多くありましたが、すっきりとした余韻が残る作品でした。この作品の後、平手友梨奈はアイドルという職業に棺を用意し、辞めて(病めて)しまいます。もし続編が作られるのだとしたら、彼女自身の物語も相まってさらに面白いものになるでしょう。逆に言えばそこに物語を乗っけないと自分にとっては掴み所がない作品でした。僕は天才ではないので。

わたろー