劇場公開日 2018年4月28日

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「思いやりを持つこと、平等の権利を守ることの難しさ」ザ・スクエア 思いやりの聖域 Ryoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5思いやりを持つこと、平等の権利を守ることの難しさ

2018年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

 タイトルのThe Squareは主人公がキュレーターとして働く美術館にある展示物「The Square」のこと。何の変哲もない地面が四角く(スクエアに)ラインで区切られ、そこに、この中では「すべての人が平等の権利を持ち、平等に扱われる」「この中にいある人が困っていたら、誰であれ助けなければならない」と書かれている。この作品によって人々は「このスクエアの中では」という限定符に対する違和感(もしくは「本当はスクエアの外でだって同じように平等の権利と思いやりがあるべきではないか」という正義感)が喚起されるはずである。この映画が面白いのは、このスクエアという作品を展示する側である主人公自身が、「平等の権利」と「思いやり」を持つことに失敗してしまうという所にある。
 思えば、海外に行ったことのある人ならば、貧しい人々(こじき)に、何かせがまれたことがあるのではなかろうか。そういう時、例えば自分の経験では「そういう人には何もあげてはいけない」と教えられ、無視する習慣がついている。もちろんそこには色々な(渡してはいけない)理由があるのかもしれない。ただ、この映画に登場する「The Square」というインスタレーション、そしてこの映画そのものが作品として成り立つのは、やはり「平等の権利」や「思いやり」というものを持つ事の難しさを表しているように思える。
 映画は2時間半ぐらいあったように思えるが、この「思いやり」を持つことの難しさをまざまざと見せつけられ、これっぽっちも退屈はしなかった。
 現代の不条理を映す一本として是非。

Ryo