劇場公開日 2019年3月8日

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「2019年にして刻まれたアニメの新しい境地」スパイダーマン スパイダーバース ヨックモックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.02019年にして刻まれたアニメの新しい境地

2019年3月17日
PCから投稿

アニメーションの表現の鉱脈は掘りつくされていなかった。21世紀であっても。それを示した素晴らしい作品。

マンガ的(アメコミ的)な具体的表現が取り込まれている。そんな試み自体はこれまでもなされていたことだが、それが従来と異次元のレベルで一連の演出の中に取り込また上で作品が構築されている!

それまでのマンガ的表現の取り込みは、手段が先行しているようなケースが多く、結果として目を引くために奇をてらったことをやってる感も否めず、うすら寒さや違和感を覚えるものが多かった。
一方でスパイダーバースはそんな感覚がまったくない。二次元世界と三次元世界の行き来が、キャラクターの心理と現実空間、静と動の際、要所要所で非常に効果的かつ馴染んだ形で擬音の書き文字やコマ割り演出が挟み込まれており、作品全体のスピード感をより加速させている。

また、最近のアメリカの大作映画ではもはや「入れなくてはいけない縛り要素」にすら感じる黒人やら女性やらへの平等主義的メッセージについても、とても自然な形で描かれていた点は見事としか言いようがない。黒人警官の中流家庭の等身大で肯定的な描き方とか、エリート主義のひずみ(この学校にも変な格好のモブがいる。のっぽ女とか)とか。特に主人公の黒人は、黒人のステレオタイプさは備えつつも子供っぽく悩み愛らしいニュートラルな少年となっており、レジェンドなスパイダーマンの役を担ってもヘイトを買わない立ち振る舞いや設定がいい感じだった。
これらは原作からして上手く調理されていたのかもしれないけれど…。インクレディブルファミリーといい、一流のクリエイターはそこらへんの処理が本当にうまい。

アニメでしかできない複数スパイダーマンの描写を、盛大に絵柄や色合いを変えたキャラクターを力業で描いくという一見無理のあることを平然となしている点も凄まじい。絶妙なバランス調整をしたからこそなのだろう。さもないと、ジャンプ集合系のゲームみたいなすごく残念な感じになりかねない。ただのファンサービスになっていない。
パラレルワールドを無尽蔵に生み出しまくるアメコミだからこそ、こんなメタネタ全開のシナリオが描けるのだろう。

その点、かつては世界中の一流クリエイターが恋をした80~90年代のジャパニメーションという文化は、2019年現在はロリコン萌え文化を湛えたアニメというブランド価値を伴って世界で認知されているということを突き付けられ、一抹の悲しさを感じざるを得ない。

しかしながら、ペニー・パーカーは可愛い。コンニチワー、ハジメマシテヨロシクゥー

ヨックモック