劇場公開日 2018年4月6日

「爽快感の中に見えた希望」クソ野郎と美しき世界 すし子さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5爽快感の中に見えた希望

2018年4月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

稲垣吾郎氏、草彅剛氏、香取慎吾氏それぞれの役者としての力量が試される作品でしたが、園子温監督、山内ケンジ監督、太田光監督、児玉裕一監督に調理された役者はやはり面白く、愛すべきキャラクター(クソ野郎)になっていました。

ep.1 園子温×稲垣吾郎 『ピアニストを撃つな』
園子温監督のゴミゴミした雑多な世界を走り抜けていく爽快感と、稲垣吾郎の紳士でしなやかな持ち味がどのような化学変化を起こすのかと注目していましたが、まろやかに融合していました。
浅野忠信氏、満島真之介氏、馬場ふみか氏のキャラクターの立ち具合に引けを取らない、ステレオタイプの稲垣吾郎氏に役者以上のエンターテイナーとしての確固たる存在を感じました。
稲垣吾郎氏の容姿端麗さに赤のバスローブや重厚なゴブラン生地のジャケットを着せるとたちまち妖艶で上品になり、またグランドピアノの漆黒との親和性の高さによって、視覚での説得力の大きさを痛感しました。
エキストラが多く、場面によってはとてもチープに感じましたが、浅野氏の迫力と、稲垣吾郎氏の浮世離れした王族感によって、いい味になっていました。ピアノの旋律や稲垣吾郎氏の声が効果的で、より大門(浅野忠信氏)の浅ましさが浮き彫りにされ、フジコ(馬場ふみか)を挟み、両者が対称的で面白い構図になっていました。

ep.2 山内ケンジ×香取慎吾 『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』
香取慎吾氏等身大の役柄で、設定としてはとてもファンタジックですが、見やすい・わかりやすいストーリーでした。
歌喰い(中島セナ)の少女と香取慎吾氏のコンビがかわいらしく、また香取慎吾氏の絵画作品が随所で見られて、隅々まで目を凝らしたいシーンが多くありました。
石川彰子氏がいい味をだしていました。
耳なじみのある楽曲の使用もこの作品の中で良いスパイスとなっていました。

ep.3 太田光×草彅剛 『光へ、航る』
太田光監督の脚本の面白さと、草彅剛の演技力が最高でした。
数十分の中であれだけの世界観を作り、完結させられるのはこの最強タッグだったからこそだと思います。
草彅剛氏と尾野真千子氏と役柄の関係性が面白く、セリフは太田節炸裂で、ただ草彅剛氏の口から出ると社会問題も皮肉も耳障りが悪くない…不思議な感覚でした。
草彅剛氏の表情がとにかく素晴らしかったです。ある場面では魂を揺さぶられる目つきで、鳥肌ものでした。

ep.4 児玉裕一×全キャスト 『新しい詩』
これはミュージカル仕立てでミュージックビデオを見ているようでした。
新しい詩の歌詞が稲垣吾郎氏、草彅剛氏、香取慎吾氏の3人へのエールにも取れ、雲が風に流され再び太陽の光を浴び始めたそんな情景が浮かびました。
それぞれ個々として並大抵のキャリアを構築していないと、ここまで芸能界を上り詰められる各人のエンタメ性を感じる作品でした。

新しい地図の3人を応援している人だけでなく、挫折を味わったすべての人に見てもらいたい作品です。

コメントする
すし子