劇場公開日 2018年5月25日

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「☆☆☆☆但し…。 ☆☆☆★★でも有る。 シリーズ最高傑作! 兎にも...」妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0☆☆☆☆但し…。 ☆☆☆★★でも有る。 シリーズ最高傑作! 兎にも...

2018年6月2日
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☆☆☆☆但し…。
☆☆☆★★でも有る。

シリーズ最高傑作!
兎にも角にも山田洋次の演出力の凄さに絶句する。
今の日本の映画界に於いて、これほどまでに高いアベレージを保ち続ける事に心底嫉妬をする

…のだけども、フッと少し考え込んでしまう。

このシリーズは、言わずと知れた小津安二郎の『東京物語』へのオマージュから始まった。
そして今回のタイトルは、当然の様に成瀬の『妻よ薔薇のやうに』が基になっている。
思い返せば『おとうと』は、市川崑の名作だし。そもそも。過去の山田洋次作品には。海外や国内の名作を再構築させた作品が目立つのは事実だと思う。
それらを題材として。簡単そうに見えながら、実は物凄い事をいともすんなりとやってのけてしまう。だからこそ嫉妬してしまうのだけれど。じゃあここから何か、映画としての新しい《モノ》が、果たして誕生するのかどうか?と考えた場合に、それはとても怪しい。
だからこそ。本来ならば☆☆☆☆…と、高い評価をしたいのだけれども。或る意味で☆☆☆★★…の、無難な作品と言えなくもない。

成瀬のキーワードとして。吉行和子が通うお馴染みのカルチャースクールでは、林芙美子の「めし」を話題にしていた。
勿論、『めし』も成瀬の代表作の1つ。
じゃあ!『妻よ薔薇のやうに』は?と言うと。必ずしも成瀬の代表作とは言えないのじゃなかろうか。

成瀬の『妻よ…』はこの作品とは違い、夫が愛人と一緒に暮らし戻って来ない。
一旦は戻るのだが、最後には愛人の元へ行ってしまう。
その展開に唖然とさせられてしまうのだが。
…思うのだけれど、どう表現すれば正解なのか分からないのだが。何だか胸の奥にモヤモヤが残る作品と言えるだろうか。

今回の山田版は、観終わって「上手いな〜!」とは思うのですが、少し時間が経ってしまうと、そんなに記憶には残らないのでは?…とも思ってしまう。
しかし、成瀬の『妻よ…』はどうか?と言うと。良作では無いのに、記憶の中にはいつまでも残って行く。
無難な名作よりも、歪な作品にこそ新しい【何か】が埋まっている…と言えるのかも知れない。

では山田版はコメディー映画として笑えるのか?

その時の観客にもよるとは思うのだけれど。観ていて思わず笑い出したならば、最後まで笑えるだろうし。「笑わせ方が古いよ!」…と、少しでも感じてしまうと、最後まで笑えない。
そんな感じだろうか。

とは言え、「今回はどんな役柄なのか?」が、お楽しみな小林稔侍を始め。毎度お馴染みのコメディーリリーフである笑福亭鶴瓶や、徳永ゆうき等の登場のさせ方はまさに絶妙。
こうゆうのを、サラッとこなしてしまうところ。
登場人物を平田家のリビングへと集めての話し合い。
セット内を縦横無尽に活かす撮影。流れる様にスムーズな編集等、決して強く主張する事は無いが、スタッフ陣の高い技術レベルが伺える。

タイトルは横尾忠則の画。
悠々自適の毎日を過ごす橋爪功の名前は平田家の右外へ。
吉行和子と西村まさ彦の名前は家の中。
夏川結衣の名前は、内容を考えれば分かる様に家の外。
中嶋朋子と林家正蔵の夫婦の名前は、ガヤ要員らしく家の外。
妻夫木聡の名前は、今回色々と奔走するからなのか?屋根の上。

そして、蒼井優。

蒼井優の名前は、平田家の下に表示される。

その意味は、単純に平田家を下から支えているから…だけでは無いのかも知れない。

小津が描いた家族は平山家。
それに対して山田洋次が選んだ名前は平田家。
平田の【田】は山田の【田】なのだろう。
《田んぼ》には水が必要で、蒼井の【井】には水の要素を含んでいるからなのか?
ラストシーンで、平田家に新たな【稲穂】が実った事が観客に知らされるのだった。

※ 途中にほんの少し入る談志VS三平の代理戦争は笑う案件ですよ、皆さん(笑)

2018年5月28日 TOHOシネマズ日本橋/スクリーン3

松井の天井直撃ホームラン