劇場公開日 2018年5月25日

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「シリアスなテーマを、笑いに変えるテンポのよさと、確かな演技力の”平田家オールスターズ”」妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5シリアスなテーマを、笑いに変えるテンポのよさと、確かな演技力の”平田家オールスターズ”

2018年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

3年連続第3弾。春~初夏の定番コメディシリーズとなりつつある。

大家族構成の昭和ホームドラマ的なライフスタイルは、現代の実情からは大きく乖離しているのだが、「サザエさん」しかり、60歳以上が中心の客層には、そんなことはどうでもいいのだろう。

むしろ、そこに無理なく現代的な家族エピソードを挿入する技量が見事。これまで"熟年離婚"、"無縁社会(孤独死)"などを取り上げ、今回は"夫の主婦業への無理解"を描き、"主婦への感謝"につなげている。

シリアスなテーマを、笑いに変えるテンポのよさと、細かい笑いのエッセンスは、巨匠・山田洋次(86)の喜劇の集大成になる。

山田洋次の代表作といえば、「幸せの黄色いハンカチ」(1977)、「息子」(1991)、「学校」(1993)、「男はつらいよ 寅次郎の縁談」(1993)、「たそがれ清兵衛」(2002)など、日本アカデミー賞で最優秀監督賞3回、最優秀脚本賞4回を獲得している。

86歳で現役、かつ第一線でヒットしつづける・・・。しかもほぼ年1作ペースで作る老匠たち。クリント・イーストウッド(87)、ウディ・アレン(82)、リドリー・スコット(80)・・・。80歳を越えて、こんな精力的に活動できるのが、信じられない。スピルバーグの70歳なんてまだまだ若造なのかも。(32歳から見た16歳みたいなもの)

また「家族はつらいよ」シリーズは、山田洋次監督のもとに集まった演技派俳優たちが最も重要で、このメンツを年1回でスケジュールを押さえられるのも、山田監督ならではこそ。

橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優ら"平田家オールスターズ"(!!)と、小林稔侍、風吹ジュンなど、安心して観られる俳優に支えられている。

ちなみに、本シリーズ主演の橋爪功と吉行和子が、山崎貴監督の「DESTINY 鎌倉ものがたり」(2017)の中で、黄泉の国へ旅経つ夫婦役でオマージュ出演していたのが印象的だった。

(2018/5/26/TOHOシネマズ日本橋/シネスコ)

Naguy