劇場公開日 2018年2月10日

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「悪女になるなら恋慕はおよしよ」悪女 AKUJO 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5悪女になるなら恋慕はおよしよ

2018年2月16日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

『殺人の告白』のチョン・ビョンギル監督最新作は、
『渇き』のキム・オクビンが殺し屋を演じる
バイオレンスアクションノワール。

レビュー書けていないが『殺人の告白』は
エンタメ性テーマ性ともに高く、おまけに中盤の
カーチェイスシーンのアクション演出など相当に
冴えていたので、今回はどんな映画になるのかと
楽しみにしていた。

...

大抵のアクション映画というのはドラマの
合間合間にアクションシーンを挟むものだが、
怒り・痛みが感じられる秀逸なアクション描写は
それ自体が主人公の内面を語るドラマになり得る。
『悪女』はまさしくそんなアクション映画だ。

冒頭からいきなり脳天がブッ飛ぶ壮絶アクション!
ハンドガンそして刃渡20cmはある短刀2本で主人公が
数十人の男達をアクロバティックに抹殺していく様を、
主観視点、しかも擬似ワンカットで見せるのである。
狂気すら感じるほどの荒々しくスピーディな
戦いぶりと縦横無尽のカメラワークはもはや
『すごい』『カッコいい』等の感覚を越えて唖然茫然。
主観視点(FPS)から三人称視点(TPS)に切り替わる
瞬間の演出にも鳥肌が立つし、あどけなくさえ見える
顔立ちのヒロインが血塗れで雨の中に立ち尽くす
決めの画にもあらゆる意味でゾッとする。

中盤そしてクライマックスのアクションは流石に
このオープニングほどの強烈さは無いのだが、
それでもスピード感と迫真性を兼ね備えた
擬似ワンカットのド迫力は並のアクション映画を
軽々と凌駕。ボンネットであんなことできんの!?

...

主演キム・オクビンは、鬼気迫るアクションも
天晴れだが、序盤での氷のような表情が
だんだん和らいでゆく様子も印象的。
『悪女』と呼ぶにはあまりに恵まれない
悲しいヒロイン。復讐の為に血生臭い人生を
生きると決めた時点で、彼女は普通の人のように
幸せを掴む道を失ってしまっていたんだろうか。

ヒロインに本気で惚れてしまう監視役ヒョンスは
ひたすらにヒロインに尽くすナイスガイだし
(けどあのアプローチは割とストーカー気質(笑))、
常に厳しく冷徹なクォン部長も、叱責はあくまで
自身の後悔を部下たちに味わわせたくないが故。
細かな台詞や微妙な表情からも、ヒロインと
その周囲を親身に想っている事が伝わる。

物語の大筋そのものは『ニキータ』の変型な訳だが、
単に時系列をなぞるのではなく、ヒロインの過去と
現在を交差させて後半へ収束させていく流れにより
適度なサスペンスで観る側を飽きさせない上、
ヒロインの葛藤もより鮮明に描いてみせている。

...

敵側の描写に関してちょっと状況や心情が分かり辛いのは
難点だし、復讐の為に殺し屋になった主人公が新たな
復讐の種を蒔いてしまうあの場面、それと絡めての
愛娘との関係性などにも切り込んでほしかった気はする。
韓国映画らしいヘヴィで容赦無い物語も人を選ぶだろう。

しかしながら、
ステレオタイプに陥ってしまいそうな物語を、魅力的なキャラ、
淀み無い構成、そして早くも今年No.1級の超絶アクション
演出で一気呵成に描ききった本作。見事です。4.5判定で!

<2018.02.10鑑賞>

浮遊きびなご
近大さんのコメント
2018年2月25日

コメントありがとうございます♪
目標だった2000本を遂に突破しました。

はい、入院してました。
2月始めに大きな病気患ってしまって、緊急手術も…。
一時はどうなるかと思いましたが、何とか回復して、(土)に退院してきたばかりです。

入院中暇で暇で、昔見た作品のレビューを随分と書いてました。
さすがに病室で見れないので、思い出しながら思い出しながら、うろ覚えな部分もありましたが(^^;

『悪女』や『スリー・ビルボード』や見れて羨ましい限りです。
地方のこちらでは上映の予定はまず無いので、レンタルを首を長くして待ってます。

引き続きこれからのレビューも楽しみにしております♪(^^)

近大