劇場公開日 2020年11月13日

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「ヤン・イクチュンの内面の表現に心奪われる」詩人の恋 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヤン・イクチュンの内面の表現に心奪われる

2020年11月29日
PCから投稿

吹けば綿毛のように飛んでいきそうな小さな映画だが、眩い日差しは時に神々しく登場人物の相貌や胸のうちを照らし、私たちに忘れがたい瞬間をもたらしてくれる。物語はその冒頭、詩人の詠んだ作品が「人生の美しいところばかりを見ている」と手厳しく評されるところから始まる。それはまさにおっしゃる通りで、この2時間の旅路で彼が様々な心の変遷を重ねるたびに、詩の表現のみならずこの映画の質感までもが光と影を帯び、奥深さを増していくのだから面白い。悲しみや苦しみを描くことで繊細な光は一層際立ち、また、一言で希望と言っても、そこには実に様々なかたちがあることを教えてくれているかのよう。物語を彩る人物も環境もほんの最小限ではあるが、これだけの要素で多様な感情を織り成していく手腕に心奪われる。何よりもヤン・イクチュンの、決して代表作のようなフィジカルさではない”内面の見せ方”に恐れ入るばかり。なんと奥深い俳優なことか。

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牛津厚信