劇場公開日 2018年2月1日

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「ヒューマニティーのコントラスト」スリー・ビルボード vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ヒューマニティーのコントラスト

2019年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

知的

人間の愚かさと、強さをコントラストとして描いた良作。
この映画を語るなら、どうしても”Fargo”を話しておかなければならない。コーエン兄弟の最高作品とも言われる、人間のあまりフィーチャーされない人間臭さをテーマにした作品。その”Fargo”もミズーリの田舎町ファーゴを舞台にしている。
この映画は、その2017年代版。コーエン兄弟に劣らない強烈なキャラクターの作り手。ストーリーはささいなことを巡ったあまり現実では考えられないような暴力の誇張された世界を描いています。この作品のすごいところは観ないと伝わらないコメディとドラマ。

キャラクターを築き上げるうえで、大切なのは、疑問と解決。シリーズものでない限り、映画の中でのキャラクターは最初は誰も知らない。「このキャラクターはどういう人物なのだろう。」「何を考えているのだろう。」など視聴者は必ず疑問から入ります。その疑問でどこまで振り切れるのかというのは脚本家の力だと思います。視聴者を遠ざけるような、意味不明の言動を避けながらありきたりな、見たことのあるようなキャラクターを避け、ユニークかつ興味の湧くキャラクターを最初の30分で作り上げられるかがとても重要。この作品はそれが完璧。超有名な超実力派の俳優たちをキャスティングし、リッチなキャラクターを作り上げていました。どのキャラクターも100%愛せるわけではなく、どこか他の人と違った感情のツボがある。タイトルにもなっている3つの看板を建てたメインキャラクター、ブチギレて向かいの看板屋の青年をボコボコにし、窓から突き落とす警官。その少し視聴者からは距離の遠いキャラクターも、町外れの小さなエリアで起こる事件やいざこざを通して少し不器用にも交わることで、人間らしさ、表には見せない人の良さというものが現れてきます。その絶妙な距離感とコントラストがとても好き。

どこまで現実なのかはわからないが、このようにフィクションであることは観ていてわかるのに、映画を見ている途中には、そのフィクション感を忘れている自分がいるのが、エンドロールに気づかされる。その映画を映画として観れる映画が好き。

vary1484