劇場公開日 2018年1月26日

  • 予告編を見る

「我々鑑賞者にも覚悟を迫ってくる」デトロイト 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5我々鑑賞者にも覚悟を迫ってくる

2018年1月27日
iPhoneアプリから投稿

綿密な取材を重ね、誰よりも真実に迫り、恐らく当事者の恐怖や深く傷ついた精神を擬似体験したであろう監督が、絶望的なおぞましさを乗り越えてこのような作品を作り出したことに何よりも最大限の敬意を払います。

並みの監督ならば、おぞましさやそれをどう表現すべきかという責任感にそれ以上耐えられなくなって(ジョン・ボイエガの吐瀉はその象徴に思えた)放り出してしまうか、被害者であることを殊更強調した感動作品などに納めてしまうのではないだろうか?

ビグロー監督は人間世界の現実(例えば、正義と真実を問うはずの裁判が、時には被害者を傷つけるような人格批判の場と化す)を冷徹に描くことで、『デトロイト』が特定の状況下における特殊な出来事ではなく、現代社会でも未だ解消できない普遍的な問題であることを突き付けてくる。

鑑賞後は我々自身の良心や生きざままで問われているような重さが残る。

グレシャムの法則