劇場公開日 2018年1月26日

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「ものすごくおぞましくて、ありえないほど面白い」デトロイト ヒートこけしさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ものすごくおぞましくて、ありえないほど面白い

2018年1月27日
iPhoneアプリから投稿

吐き気を催すおぞましさ。アメリカが50年前から何も変わっていないことを告発する傑作。劇中ザ・ドラマティックスのラリーが誰もいないクラブのステージで唄う歌は明らかにドナルド・トランプに向けたもの。「あなたは金持ちかもしれないが全てを手したわけじゃない。大切なのは愛さ」

特筆すべきはアルジェ・モーテルでの一部始終を描いた中盤の40分間。キャスリン・ビグロー監督の演出が冴えまくっていて尋常じゃない臨場感と緊張感がある。不謹慎な表現やけど映画としてめちゃくちゃ「面白い」。個人的には同監督作品としては初めて文句なし。アカデミー賞落選がどうした。これは傑作

これが対岸の火事じゃないのがまた恐ろしい。日本でも韓国人とかに対する差別的な言動は特にネットではそこかしこにあるわけだろ(逆もそうか?)。本作が描いた事件はそれの延長線上にある。50年前のアメリカの一都市のいちモーテルで起こった事件が今の世界の縮図として映る。ヒップホップ的ミクロ視点

ビグローの近作で言うと『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』に対してはどこかで「てめえの尻拭いじゃないか」と思うところがあった(確かにジェレミー・レナーとジェシカ・チャステインはヒーローなんだろうけど…)。でも『デトロイト』にはそれがない

『デトロイト』と『パディントン2』は表裏一体。前者が今の現実を映したものなら後者は今人類が目指すべき世界を描いたもの。どちらも今観るべき傑作。劇場へ急げ!

ヒートこけし