劇場公開日 2018年1月26日

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「忖度しないキャスリン・ビグロー!」デトロイト ノリック007さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0忖度しないキャスリン・ビグロー!

2018年1月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

黒人に対する差別にも問題はありますが、現実はもっと根深いという
恐怖を感じました。
社会的地位を利用し、人の命を奪うという現実は確かにあると思います。

行政(警察)、司法、立法に見捨てられ、殺されるという恐怖です。
組織は、決して非を認めず、自己正当化し、暴走するという恐怖です。
この恐怖を受けるのには相応の覚悟が要ります。
この恐怖を受け止められず、混乱し、嘘を言えば、恐怖は現実になります。
米国、デトロイトだけの問題ではなく、日本でも起こるということです。

日本の警察官も誤認逮捕しますし、裁判官も冤罪判決を下します。
誤認逮捕した警察官は、決して裁かれることはなく、真相は闇の中です。
冤罪判決を下した裁判官は、決して裁かれることはなく、真相は闇の中です。
冤罪の被害者には、国税の中から国家賠償が支払われるだけです。
立法は、この現実に対応することはなく、略式起訴という抜け穴を作り、
真相を闇に葬っています。

1992年9月28日、検察は、金丸信を政治資金規正法違反で略式起訴し、
罰金20万円を命じました。
検察は、国民から凄まじい批判を受け、検察庁の表札にはペンキが
かけられました。
1993年3月6日、金丸信の妻が死亡した際に受け取った遺産に着目、
日本債券信用銀行の一部が申告されていないという事実を突き止め、
金丸信の自宅へ家宅捜索を行ったところ、数十億の不正蓄財が発覚し、
捜索の中、時価1千万円相当の金塊が発見されました。
検察は、一事不再理の原則から金丸信を起訴することはできず、
真相を闇に葬りました。

民間企業でも同じで、過労死よる自殺があります。
1991年8月27日、電通に入社して2年目の大嶋一郎さん(享年24歳)が
長時間残業のため、自殺しました。
2015年12月25日、電通に入社して1年目の高橋まつりさん(享年24歳)が
長時間残業のため、自殺しました。

大嶋一郎さんの遺族は、電通に損害賠償請求を起こし、電通が遺族に
1億6800万円の賠償金を支払うことで結審しました。

検察は、高橋まつりさんが死んでも、会社を略式起訴し、50万円の
罰金命令しただけです。
検察は、高橋まつりさんに過重労働をしいた上司を起訴していません。
結審までは待とう。
検察の賢明なる判断を期待する。

メディアが電通にどんな忖度しているのかわかりませんが、不倫は大きく
報道しても、このような事実も大きく報道することはないでしょう。
このような事実は、50年どころか、もう忘れ去られていることでしょう。

もし、高橋まつりさんやご両親が電通がこのようなブラック企業であると
知っていたのなら自殺を防げた可能性は高いと思います。
だから、メディアの果たすべき責任は重いと感じています。

電通が、優良なエンタテインメント・コンテンツを提供するために、
コンテンツ・ホルダーとの良好な関係構築、 映画製作委員会への参画、
制作会社やプロダクションとの連携、イベント展開、オリジナルキャラクター
の開発などを積極的に進めるというのなら、大嶋一郎さんや高橋まつりさんの
過労死に関する映画を制作し、公開してほしいです。

日本では「デトロイト」のような映画が作成され、世界公開されることはないでしょう。
だから、日本映画はつまらないし、見る気もしません。

トランプ政権下でも、忖度することなく、差別意識を乗り越えて
「デトロイト」のような映画を世界公開する米国の凄みを感じました。

ラストは、「人間だけが神を持つ」とうい感じで、助かりました。

映画の社会的な背景を知りたいという人にはパンフレットの購入をお勧めします。

ノリック007