劇場公開日 2018年2月24日

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「機能不全家族・毒親の元で育った人は「さよ朝」を観て泣き散らかそう」さよならの朝に約束の花をかざろう sskさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0機能不全家族・毒親の元で育った人は「さよ朝」を観て泣き散らかそう

2018年3月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

早速私事で恐縮なのですが、私はいわゆる毒親と呼ばれる人たちの元で育ちました。おおよそ幸せな親子関係に必要とされる機能が停止し、身体的暴力と言葉の暴力が支配する機能不全家族です。
子どもを傷つけることが当たり前の場所と言ってもいいでしょう。
愛されたことがないから、愛が何なのか未だにわかりません。

そんな僕が先ほどこの映画を見てきました。

この映画は、親子の物語です。
不老長寿の一族・イオルフの民である主人公のマキアと、そんなマキアに拾われた人間の赤子エリアル。
マキアは母親として、子育てに奮闘します。そこで描かれているのは、決して上手ではないけれど幸せな1コマ1コマです。親が子どもに心の底から向き合い、温かさを与え、生きる瞬間を共有する姿です。

それら全ては僕の家に無いものでした。

「愛して、よかった」

劇中でのマキアのこの一言で僕は崩れ去りました。止め処なく止め処なく涙が溢れました。必死に嗚咽を堪えようとし、喉が震えました。隣の友人はドン引きしていました。
身近で大切な人に「愛してよかった」と言ってもらえること。「愛されてよかった」と感じられること。そういう未曾有の温かさみたいなものが愛なのかもしれない。はっきり言葉にできませんが、そう思いました。

例え赤の他人の、異種族の子どもとの関係でも「愛してよかった」という境地にたどり着ける。僕の親も10分の1、いや1000分の1でいいから、マキアのようであってくれたなら。暴力と傷ではなく、愛と癒しを与えてくれたなら。

マキアのような親がほしかったなあ

そう思うと、一層涙がぽろぽろと零れ落ちました。僕がいくら願おうと、親が愛を与えてくれることはありません。僕に幸せな親子関係が訪れることは永久に無いのです。

ですが、僕がマキアになることはできます。毒親の家系には負の連鎖として受け継がれてきた毒の歴史があることがほとんどですが、親を変えることができなくても、毒を断ち切り、子どもが変わることはできるのです。例え親に愛されなくても、マキアのように誰かを愛し、自分の子どもを愛すること。そして自分が「愛して、よかった」と思えるのだということ。この映画はそんなことを僕に、機能不全家族で育った僕のような人間に教えてくれました。

僕にとって大切な作品となった「さよならの朝に約束の花をかざろう」。
みなさんもおひとつ、いかがですか。

ssk
iwaozさんのコメント
2023年2月26日

素晴らしいレビュー感謝致します。
レビューを読んで涙したのは初めてです。あなたが見てくれた事で、
岡田麿里監督はじめスタッフの皆さんの辛苦が大いに報われた気がします。(T . T) ^ ^
本当に素晴らしい作品だと思いました。何度でも再上映されるべき傑作だと思います。
ファンタジーやライトノベルと思われて敬遠されるのが残念です。
深い愛についての、平和を希求する戦争映画でもありました。感謝!

iwaoz
まゆさんさんのコメント
2018年3月4日

初めまして。
私も毒親育ちですので、この映画を観て涙された理由、想い、とても分かります。
これからも沢山素敵な映画を観て、温かい愛の形を感じ、沢山涙を流して下さいね。
その分これまで抑えてきた辛かった悲しかった感情が癒されて、きっと素敵な親になれると思います。

お気持ちが痛い程分かりましたので、思わずコメント入れてしまいました。
失礼致しました。

まゆさん
sskさんのコメント
2018年3月3日

コメントありがとうございます。そちらの記事については未見でした。
拝読させて頂きます。

「僕の名前はズッキーニ」という映画についても教えて頂きありがとうございます。
「この世界に、僕はひとりぼっちじゃなかった。」というキャッチコピーに早速グッときました。

ssk
uttiee56さんのコメント
2018年3月3日

こちらのレビューはご覧になられましたでしょうか。
監督自身の家庭での体験がベースになっていることがわかります。

「さよならの朝に約束の花をかざろう」レビュー - アキバ総研
https://akiba-souken.com/article/33266/

また、ギリギリまだ上映されている「僕の名前はズッキーニ」もおすすめします。
(トラウマ抉られて辛い思いをされるかもしれませんが...)

uttiee56