劇場公開日 2019年5月18日

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「【”公民協働の先端を行く文化の殿堂” 図書館の枠を超え、全ての人に”知”を与え、”文化”に触れる場として機能させようとする、誇り高き図書館員達の姿を描き出したドキュメンタリー。】」ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”公民協働の先端を行く文化の殿堂” 図書館の枠を超え、全ての人に”知”を与え、”文化”に触れる場として機能させようとする、誇り高き図書館員達の姿を描き出したドキュメンタリー。】

2021年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

知的

幸せ

ー 今作品から、観る側に発信される情報量は膨大である。
  だが、良く観ればフレデリック・ワイズマン監督が伝えたかった事は、実にシンプルである事が徐々に分かって来る・・。ー

■感想
1.冒頭の、リチャード・ドーキンス博士が、財団を立ち上げた趣旨を”NY公共図書館”のホールに集まった人たちに語り掛けるシーンから始まり、エルヴィス・コステロやパティ・スミスに対するインタビューのシーンなど、この図書館は本を貸し出すだけでなく、文化を発信している事が良く分かる。

2.NY公共図書館分館の多さ及び、特色ある活動
 ◇特に印象的な分館
 ・「点字、録音本図書館」
  点字の読み方を教えるシーン、男性がナボコフの「マルゴ」を語り録音するシーン、手話通訳者が、読み手の感情(怒り、懇願)などに合わせ、同じ文章でも手話での伝え方が違う事を図書館に集った人々に伝えるシーン
  ー ”NY公共図書館”が文化を伝えようとしているのは、目の不自由な方も含まれている。そして、啓蒙活動もしている事に驚く。ー

 ・「黒人文化研究図書館」
  ー ”NY公共図書館”が、このような施設を作った意義は大きい。文化の伝播に人種の違いは必要ないのである。ー

 ◇特色ある活動
 ・ネット環境が自宅にない人(1/3もいるとの事。)に対し、図書館員達が、マンツーマンで、パソコンの使用方法を教え込む姿。

 ・子供達に対して図書館員が様々な事を教えているシーン。
 ー 家で学ぶ場がない子供たちなのかもしれないな・・。ー

 ・演奏会のシーン

 ・様々な求人を、消防士さんはじめ多数の職業の方々がプレゼンしているシーン。
 ー 職業安定所の機能もあるのか・・。しかも、斬新な方法である。ー

3.司書、ボランティアの人たちが、誇りと愛場を持って仕事に静かに打ち込む姿。
 ー 100年前の広告や、新聞記事を電子データとしてまとめる根気のいる仕事である。だが、彼らの様な地道な仕事が、アンディ・ウォーホールなどの芸術家たちが生み出した絵画や、文学を支えていたことが分かるのである。ー

4.図書館運営予算を、どのように確保するのか、頻繁に議論する図書館幹部たちの姿。
 ・どのシーンでも、彼ら彼女らが、”NY公共図書館”を文化の殿堂として、如何に発展させたらよいのかを真剣に議論している。
 1)電子書籍の貸出率の増加(300%!)への対応。
 2)ベストセラーか、将来を見据えた本の購入を優先するのか。
 3)ホームレスの問題を如何にするのか・・。

<「図書館」の仕事の概念を突き破り、”文化”の発信基地になっているニューヨーク公共図書館の全てのニューヨーク市民を対象にした様々な活動に、畏敬の念を抱くとともに、
 フレデリック・ワイズマン監督は”真の民主主義とは、何であるか”と言う事をこのドキュメンタリー作品で伝えたかったのだという事が分かる、素晴らしきドキュメンタリー作品である。>

NOBU