「家族を撮ろうと思えば政治は避けられない」ヴァーサス ケン・ローチ映画と人生 カメレオンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0家族を撮ろうと思えば政治は避けられない

2023年6月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ケン・ローチは劇中で家族を撮ろうと思えば政治は避けられないと言い切る。

ケン・ローチといえば、ケスの美しい映像と、救いようのない結末が浮かぶ。

グラマースクールに行けて、オックスフォードに進んでいなければ抜け出せないままだったであろう、他の人たちへの思い。社会への絶望、反抗。それが彼を撮ることに駆り立てる。
引退を表明しても、保守党の政権になるとすぐまた撮らずにいられない。

65年頃には上流階級の物語ばかりで、普通の人が登場することがなかったというのは驚きだった。
上の人が下を演じることは出来ても、逆は無理だと。そして、上流階級の遊びの恋愛は許されても、労働者のそれは許されない世界。
そこから比べると大きく世界は変わったといえる。

時には労働者を裏切る労働組合の幹部を描く。全ての権力への反抗がそこにはある。

政治的過ぎると批判を浴び、仕事のない時期もあった。
信念を曲げないという印象は強いが、ネスレやマクドナルドのCMやミュージカルの俳優をやって食べていた時期もあった(ミュージカルは好きらしい)。
その強い生き方は彼の撮ってきた映画の人物と繋がる。

フランスやヨーロッパ諸国では高い評価を得ているが、イギリスではそれには及ばない。事情の分からない部分のある外国のほうがかえって評価されるのかもしれない。

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カメレオン