劇場公開日 2017年8月19日

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「襲撃も逃走も選曲が先」ベイビー・ドライバー 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0襲撃も逃走も選曲が先

2020年7月11日
PCから投稿

新しい。
新しいの根拠はAnsel Elgort。
The Fault in Our Starsで初めて彼を見たとき、なんか拍子抜けするほど普通な青年だな、と思った。スターのオーラがなく、とりわけイケメンでもない。演技は申し分ないが、印象は軽かった。のっぺり型の色白で、学園ドラマの配置でいえば、長身のギーク、いじめを被る側、セリフは僅か、といったところ。

そんなAnsel Elgortが、この映画でブレイク/スルーしている。製作陣が彼の持ち味を引き出したのか、彼がその境地を拓いたのか、映画ではその両方が同時に作用している。スター性が感じられなかったAnsel Elgortに、とてつもないスター性を見い出すことができる、ばかりか、今まで出会ったことのないヒーローに出会える。
その発見が、新しい。

新しいの根拠がもうひとつ、音楽。
冒頭のクレジットから、バックサウンドとBabyがシンクロする。
Babyが聴いている楽曲がそのまま映画音楽になって、彼がスペクトラムのように動く。
ほぼミュージカルといっていい。突如、歌い出されるミュージカルに違和を感じる人でも、これなら乗れる。
これは新しい。そして楽しい。

幼少に負ったトラウマ。殺伐とした外界と向き合うために、サングラスで目に蓋をし、イヤホンで耳に蓋をし、そのフィルター越しにBabyの世界はある。
会話をエフェクトしたダブステップみたいなのを録りためている。
ipodの親指操作が華麗。
聾唖のJosephを介護しながら、組織犯罪の片棒担ぎ。
音楽が最優先。
襲撃も逃走も、選曲が先。

強盗、カーチェイス、銃撃戦。アクション映画の旧弊なエレメントが、個性的なヒーローと、ミュージカルエッセンスによって、新しく映える。
2も3もいけそうな金脈だと思います。

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津次郎