劇場公開日 2018年3月21日

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「表情が素晴らしい」ボス・ベイビー アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5表情が素晴らしい

2018年4月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

吹き替え版を鑑賞。シュレックやカンフー・パンダなどを手がけてきたドリームワークス・アニメーションの最新作である。見かけは赤ん坊だが中身はオッさんという設定は面白く,一見子供向けのフリをして,実はかなりオッさん向けの作りになっていた。ドリームワークス・アニメーションをスピルバーグらと共同で設立したジェフリー・カッツェンバーグは,「ディズニーは子供と,大人の中にある子供心に向けて映画を作るが,ドリームワークスはフライシャー・スタジオの様な大人と,子供の中にある大人心に向けて映画を作る」と語っており,中には子供にはキツそうな描写や皮肉的な内容を持つものがあり,この作品も例外ではない。

話は,多少のサプライズはあるものの,非常にシンプルな作りで,ボス・ベイビーとは,赤ん坊のふりをしてこの世に出張してくるサラリーマンといった設定になっており,同業の者がすでに何人も地上で活動しているということになっている。両親と三人暮らしで両親の愛情を独り占めしていた7歳のティムの家に,新しく弟が誕生するというところから話が始まり,ティムとボス・ベイビーのやりとりに笑わされる。

兄弟が生まれた時の上の子の不安といったものがうまく描かれているし,まず何と言っても傑作なのが,ティムとボス・ベイビーの最初の対面シーンである。アメリカで誰かの下で働いた経験があれば,あの場面でのボス・ベイビーの数々の表情に大爆笑するに違いない。まさに,こういう上司いるいるというサンプルを片っ端から見せてくれるシーンの連続である。ただし,オッさんネタには不可欠なエロがらみのシーンが一切ないのは,ディズニーと同じスタンスなのかも知れない。

字幕版ではボス・ベイビーの声を名優アレック・ボールドウィンが勤めているらしいが,吹き替え版ではムロツヨシが勤めていて,いかにも目端が利きそうなやり手のオッさんという感じがよく出ていたように思う。ボス・ベイビーがバイバイする場面で「バハハーイ」と言うのにも笑わされた。1970 年頃にテレビから消えたケロヨンを知ってる人は,50 歳以上に限定されるのではないだろうか?周りの観客には子供連れの若い夫婦なども見られたが,彼らが無反応なのに私一人がバカ受けしてしまったのが痛快であった。

音楽はハンス・ジマーで,本気の音楽を付けており,子供の妄想がそのまま可視化される場面では,レイダースをはじめとする名作映画のパロディ場面が数多く用意されていて,いかにも,という音楽が聞こえてくるのが非常に楽しめた。また,物語の重要な曲として The BEATLES の Black Bird が使われているのも非常に気に入った。

演出には感服した。赤ちゃんの表情の純真さとオッさんの世慣れた表情が切り替わるところなど,非常に面白かった。また,様々な名画のパロディシーンも作りが上手くて楽しめた。ホロっとさせるところなどもよくわきまえた演出であったと思う。おそらく,年代や,子供を育てた経験があるかないかで評価が分かれると思うが,私は非常に楽しめた。
(映像5+脚本4+役者4+音楽5+演出5)×4=92 点。

アラカン
アラカンさんのコメント
2022年1月16日

仰る通りです。

アラカン
ゆ~きちさんのコメント
2022年1月16日

ブラックバード、よかったですよね。日本人にとっての「7つの子」的な子守唄なのでしょうか。

ゆ~きち