劇場公開日 2019年11月15日

「【所属する”組織”に対する忠誠、自らの存在意義の示し方・・。”デ・ニーロ スマイル”を大画面で見れる僥倖感にひたすら浸る豊饒な時間を堪能した作品。】」アイリッシュマン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【所属する”組織”に対する忠誠、自らの存在意義の示し方・・。”デ・ニーロ スマイル”を大画面で見れる僥倖感にひたすら浸る豊饒な時間を堪能した作品。】

2020年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ”全米トラック運転手組合”に所属する一人のアイリッシュ系ドライバーが、知恵と、胆力と、人間観察の鋭さで、労働組合の”表と裏”の活動に深く関わる姿を、1970年代アメリカの政治、事件と絡ませて描き出す。

 1960年から70年代のシーンはスコセッシ節炸裂である。
 彼の体内に流れる、”イタリア移民の血”が画面のあちこちに描かれているのだ。

 ジミー・ホッファ(アル・パチーノ)を始め、ほぼ実在の人物を次々に登場させながら、物語は1950年後半から1980年初頭までのフランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)の生き様を重厚に描く。
 観客に分かり易いように、ワンシーンのみ出演人物の末期がテロップで
流れるところも斬新である。

 ご存知のように、”全米トラック運転手組合”はジミー・ホッファが委員長に就任後、マフィアとの関係性を深め政治にも圧力をかける程の存在になっていく。
 (今作では、ラッセル・ブファリーノ(ジョー・ペシ:有難うございます。出演してくれて・・。)が代表的存在として、重要な役を担って登場。)

 冒頭の老人ホームで語るフランク・シーランの姿から、一気に1950年代にシーンは飛び、ラストは再び老いたフランクシーラン(しっかりと、、”全米トラック運転手組合 チーム・スターズの帽子を被っている・・。”)にFBIが問いかける姿及び彼が愛娘に会いに行くも・・のシーン、告解するかと神父に優しく言われても微笑むシーンで幕を閉じていく・・。
 この両シーンがあることで、今までのスコセッシ作品とは趣が違う作品と思ったのは私だけではないだろう。
 (それにしても、30年間の人間の姿の変容を表したCGには、驚く)

 フランク・シーランは何故に、ジミーに対して”ペンキ屋”の仕事をしたのか?
 様々な意見はあるだろうが、私は

 ”自らが命を掛けて守り、育ててきた愛着ある組織”

 を守るため。そして、それが盟友ジミーに対する敬意だとフランクは考えたのでは、と思った。

 が、結果的にジミーと親しかったペギーとは絶縁状態になるし(娘は嗅覚が鋭いのだ・・)、組織自体も時代の流れに逆らえず、穏当な組織になっていく。(映画では描かれていない、が老いたフランク・シーランの姿を見れば分かる)

<アメリカ近代史と巧みにリンクさせながら、実在の人物をメインキャストに据えつつ、アメリカの暗黒部分の時代の流れに巻き込まれた人々の生き様、死に様を冷徹に描いた作品。
 名優たちの姿を、大スクリーンで観る僥倖を味わえた実に豊饒な時間を堪能した>

ー 今作は、有る方の素晴らしいレビューを拝読して以来、ずっと観たかったのだが、時間的、物理的、地域的な制約のため、鑑賞時期が随分遅くなってしまった。が、それが良かったのかもしれない・・。ー

NOBU
ワンコさんのコメント
2020年2月23日

ほんとこの話は、アメリカの話ってのほほんとしてられないようなストーリーだと思うんですよね。

ワンコ
ワンコさんのコメント
2020年2月23日

これとは趣は異なるんですが、日本でもあるんです。
いろんな事故や事件が。
年金と健保で役員兼任してて、片方の投資の損失を、片方のお金で埋め合わせようとして、従業員を二つの組織で働かせて、お金は片方の組織の分だけで払って…みたいな。詳しくは話せないですけど。んで、発覚して、自殺して、公には自然死みたいな。それで、事務代行で関わってて、不正を見抜けなかった大企業とか。

ワンコ